MasaichiYaguchi

エル プラネタのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

エル プラネタ(2021年製作の映画)
3.9
脚本・主演・プロデュース・衣装デザインも自ら手掛けた、ミレニアル世代を代表するアーティストとして注目を集めるアマリア・ウルマンの長編監督デビュー作は、生活苦に陥った母娘の虚構にまみれた日常をリアルに描いていく。
ロンドンでの学生生活を終えた駆け出しスタイリストのレオは、母が暮らすスペインの海辺の田舎町ヒホンに帰郷する。
ところが母は破産寸前の状態で、アパートも立ち退きを迫られ、母娘共には崖っぷちの生活に追い込まれてしまう。
「武士は食わねど高楊枝」ではないが、SNS映えするスタイリッシュな暮らしを求めて身の回りのものを売り、ハッタリを効かせてお金を稼いで、その日暮らしをしていく母と娘。
このレオの母を演じたのが監督の実母なので、見た目だけでなく、母娘の遣り取りを含めた雰囲気に全く違和感が無い。
アルゼンチンからの移民であるウルマン監督が育ったスペインの海岸都市ヒホンで、母と共にホームレス寸前の暮らしをしたことがあり、その経験をベースに本作を製作したとのこと。
舞台となったヒホンは夏場はリゾート地として各地から来た観光客で賑わうが、シーズンオフは閑散とした街となり、2008年の世界金融危機で観光産業は打撃を受け、スペインの失業率は最悪期で25%まで達し、映画には老人ばかりのシャッター街となったヒホンが映し出される。
SNS では「インスタ映え」「盛った投稿」とかが取り沙汰されるが、リアルとフェイクの乖離が大きければ大きい程に、そこには実態の無い空しさが残るだけだと思う。