えいがうるふ

エル プラネタのえいがうるふのレビュー・感想・評価

エル プラネタ(2021年製作の映画)
4.6
新しいようで旧い、旧いようで新しいなんとも大胆な映画。黄色い字幕が流れるモノクロ映像は、構図はもちろん衣装小道具に至るまで洗練されていて眺めているだけで楽しいが、内容はかなりシビアで苦い笑いを誘う。

キラキラした世界に逃避できるネットと繋がっていることで、リアルな自分が置かれているギリギリな状況に目を背けたまま日々を過ごす逆の意味での情弱親子。そんな彼らも、いずれはその地に足のつかない生活から強制的にログアウトさせられる日が来る。軽やかで容赦のないFin.

これぞまさに、一見豊かな先進国に暮らす若者ならではの「今そこにある貧困」ではなかろうか。

EU圏でギリシャと並び突出して高い失業率で知られるスペインにおいて、電気代すら事欠くその貧困の深刻さとうらはらに妙に軽薄で刹那的な生活を送る母と娘。現実に目を背け上っ面だけは「映える」お洒落なその日暮らしをふわふわと続ける彼らの姿は思いの外リアルでなんともゾワゾワさせられる。
というのもこの日本でも、皆が羨むおしゃれな生活を謳歌しているように見える人気インスタグラマーが、実際は危うい非正規雇用の自転車操業ライフを送っているらしい・・・なんて話はもはや珍しくもなく、とても海の向こうのファンタジーだと笑ってはいられないのだ。

自ら主演のみならず脚本もプロデュースも自分でやっている若きアーティスト、アマリア・ウルマン監督の才能たるや!これからも是非注目していきたい。