濱口監督は『ハッピーアワー』が好きだった。久々の鑑賞は監督初の短編オムニバス。“偶然”に導かれる人物たちが紡ぐ対話の先の意外な顛末を描く。
「魔法(よりもっと不確か)」
親友が、気になっていると話題にした男が、実は2年前に別れた元カレだったと気づき、心がザワつき会いに行く…。
「扉は開けたままで」
50代にして芥川賞を受賞した大学教授に落第させられた男子学生が、逆恨みから彼を陥れようと、同級生にハニートラップを仕掛けさせる…。
「もう一度」
仙台で20年ぶりに再会した2人の女性が、高校時代の思い出話に花を咲かせるが、次第に違和感を覚えていく…。
どれも、日常に潜むあり得そうな偶然ではあれ、描き方が素晴らしい。短い中にもオチの読めない、いやオチが気になる描き方が巧妙。
演技しない演技の自然さと、誰もが少なからず似たような経験、または感覚を味わったであろう主題の着眼点が鋭い。
1話以外は無名に近いのかな?素人を感じさせるキャスティングがより共感を呼ぶし同化もし易い。
とは言え、個人的には『サタデー・フィクション』で一気に気になる俳優のひとりに加わった中島歩の元カレ役が良かった。思いがけず遭遇したけど、今更ながらファン度が増すという。
濱口監督は長尺に怯みがちだけど、コレは観易いうえ面白かった。