このレビューはネタバレを含みます
銃乱射事件の加害者家族と被害者家族の対話を描いた作品。
対話をする部屋の準備から始まり、いざ両者が出会ってからも、最初は他愛もない世間話で様子を探ったりと、本題に入るまでのセットアップが丁寧に描かれます。
おかげで、見ている方も当事者と同じ緊張感をもって、作品に入る事が出来ました。
銃乱射事件をテーマにした作品は数あれど、当事者ではなく、その家族…特に加害者側の両親を描いた作品は珍しく、興味深いものがありましたね。
子供が犯罪を犯すと、親にも問題があったと考えがちですが、本作の加害者家族は特に虐待やネグレクトをしてたわけでもない。
むしろ、子供の問題に積極的に介入して、普通の親以上に努力してた様子が窺えます。
監督が実際にリサーチしたところ、加害者家族は普通の人が多かったとの事で、こうした偏見を取り除くだけでも、本作を見る価値はあるのではないでしょうか。
多少は親の目が曇らせていた部分もあるとはいえ、そこまで自分の子供に対して、厳しく接する事が出来る親が果たして、どれだけいるのか…。
「親なら気付けよ!」という非難は、かなり無理難題を言っている様に感じました。
当初は「責めるつもりはない」「詰問はしない」と言っていた被害者側でしたが、加害者側の煮えきらない話に、ヒートアップし、感情的になっていきます。
しかし、それでも、じっと堪え、被害者の詳細を暗唱する加害者側の父親の姿が印象的。
泣き喚き、許しを請うたところで、許されるものではないし、そもそも、これだけ大きな罪を償えるわけがない。
でも、だからと言って、事件から目を背ける事は許されない…そんな父親の諦念と葛藤を感じさせる、名シーンでしたね。
最終的には、被害者家族側が赦しを与える事で、この対話は一旦の決着を迎えます。
「憎しみを忘れたら、息子も忘れてしまう」という台詞がある様に、赦すという行為は相手の事以上に、自分自身を赦すという意味合いの方が大きいのだなと、改めて思わされました。
シリアスで重たい作品ではありますが、演出や演技には引き込まれるものがあるし、「子供の罪に対する親の責任」「加害者家族の被害者性」「被害者家族の救済」など、いろいろな事を考えさせる作品だったなと。
ヘビーはヘビーなので無理はせず、体調の良い日にでも是非見て欲しい作品です。