この監督は心のひだを解きほぐしていくのが得意だ。
三世代に渡る盾の繋がりの歴史を鮮やかに流転させながら、それぞれの絆の深さや関係値の深度の変化を描いてみせる語り口はお見事の一言。
昔、露天で、三つの絵がある面を悉く変えて見せる手品を見せられたことがある。それにも似た感覚は、映画という手品を熟知したシアマ監督ならではの手法であろう。
しかもこれだけSF臭を感じさせないSFは、今までにないのではないだろうか？勿論、盾の軸が重要ではあるのだが、横の軸としての少女たちの友誼は、多くの人に郷愁と哀歓を呼び覚ますものであり、その部分の描写も見逃せない。
前作「燃ゆる女の肖像」のような圧倒的に力感はないのは、なんとなくシアマ監督が思いの丈を描ききって、そういうテーマにはエネルギーが枯渇してしまったら中で、全く別方面の作品を撮ることで創作力を充足しようとしてるようにも感じた。
小品のあとには、また重厚な作品を期待したいところだ。
