みかんぼうや

秘密の森の、その向こうのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)
3.9
【3年ぶりの映画観鑑賞!俗世間から離れた静かな暗闇の中に現れる美しい自然と優しい音に囲まれ、ノスタルジックな余韻に浸る】

コロナ禍以降、実は一度も映画観に行っていませんでしたが、ついに映画観復帰。以前から気になっていた本作を観たくて、吉祥寺アップリンクに行ってまいりました。

美しい画と穏やかな空気感が凄く心地よい作品・・・のはずなのですが、実はそこまで作品に集中しきれない事態に。というのも、「サウンド・オブ・メタル」のレビューにも書きましたが、私は視覚障害があり、約3年ぶりの映画鑑賞で思ったよりも視力が悪くなっていることに気づき、最前列でもギリギリ字幕が読めるかどうかで、一部理解できないところがあり(英語なら耳で補完できますが、フランス語だと字幕が全て読めないと苦しい!)、その上、主演の双子の二人の区別がつかなくて、どっちがどっち!?状態がしばらく続いてしまったのです。結果、前半部は観ながら大混乱。話に追いつこうとすることに必死で、せっかくの素敵な世界観に没入しきれなかったところがありました。

しかし、後半に入り、ようやく流れが掴め、二人の区別がつくようになってきたあたりから、その落ち着いた空気感やこのノスタルジックなファンタジーの世界観を味わえるようになってきました。ですので、観ている時よりも、終わった後に内容を振り返ったり、解説ページを読んた後から、少しずつ心の中に沁みわたる幸福感や満足感が、ふわ~っと体全体に広がる感覚を持ちました。映画館を出て数時間経った後に、「いい作品だった。久しぶりに映画館に観に行って良かった」と思える、非常に後から余韻がやってくる作品でした(上映中は追いつくのに必死だっただけかもしれませんが)。

と、同時に、これは配信が開始になったら、字幕も全て把握できる状態で、しっかりもう一度観直したい作品の第一候補に挙がる作品にもなりました。

子ども時代の親や祖母に会うって、ファンタジーとして好きな設定です。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」もある意味そうだったり、ドラえもんなんかでもたびたびそういうシーンはありますが、自分と同年代の時の親に会って友達になれる、って夢がありますよね。

オープニングから、フランス映画らしい、物凄く静かで台詞も少ない中で淡々と進んでいくので、ファンタジーでありながら派手さや奇想天外な演出などのフックは正直全くなく、いわゆる眠気を誘いやすいタイプの作品でもあります。が、主役の子ども二人がとっても可愛らしかったのと、景色や画が美しかったので、その魅力に吸い込まれて、眠気や中だるみ感はほとんどありませんでした(70分強の短尺ということもありますが)。

約3年ぶりの映画館での鑑賞。家で大画面テレビを買って、少し良いサラウンドスピーカーも設置して、人目を気にせず寝転がりながらバリバリお菓子を食べて、自由に休憩を入れたりトイレに行けたりできて、配信でいくらでも観たい作品があって新作もすぐに観られるようになって・・・もはや「家鑑賞で十分じゃん」なんて思ってしまっていた自分がいましたが、やはりあの暗闇の中の静かな空間、包まれるような音響はもちろんのこと、上映中は移動できず集中して観ざるをえない拘束感がかえって心地よく、改めて映画館という日常から離れた特別な空間と映画館鑑賞の良さを再確認した日でもありました。特に、この映画の静かに流れる自然の音が、映画館で観るのに本当に合っていたという点でも、映画館復帰としてはバッチリな作品でした(迫力のあるド派手な音響もまた堪らないですけどね!)。

視力のこともあるので主軸が配信になるのは変わりませんが、やはり時々、あの独特の空間を楽しみにいこう、と心に強く誓ったのでした。今年に入り、家から近くの下北に新しいミニシアターができたということで、手始めにそこから開拓していこうかな!?
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