pherim

ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう/見上げた空に何が見える?のpherimのレビュー・感想・評価

4.5
『見上げた空に何が見える?』

夜の交差点で邂逅する男女を、幼木と古い雨どいと監視カメラと風が助けようとするジョージア宇宙。

知ってた。深夜の交差点ってそういうとこだよねっていう序盤からフワリとした着地まで、映画ならではの遊び&心地良さ充満の不思議ロマンス。コーカサス版アメリだよ。

他のユーザーの感想・評価

泉くん

泉くんの感想・評価

4.0
ずっとグダグダでもうだめかと思ってたらラストがクソ爽快でお気に入りの映画に。
koki

kokiの感想・評価

4.4
冒頭の数分の明転、物体が画面に映り込む(画面に物体を引き寄せる)テンポから比類なき才能を見せつけられる。

画面の中の全ての存在がそれぞれの間で息をしていて、音楽が映像に波をつけ、ナレーションが物語と観客との距離を一定に保たせている。

たしかに長い尺だが無駄なエピソードはなかったように感じる。(構成はもっと捻りをきかせた方が良かった気がする)

今年の東京フィルメックスで作品賞関連独占。
ベルリンのコンペ入選作。
Q&A視聴済み
あきの

あきのの感想・評価

3.6
東京フィルメックスオンライン鑑賞
最後の畳みかけがすごい。ダークホース感。
説話上に仕掛けられた魔法が、普通のイメージを普通のイメージのまま驚くべき感動に変えている。いや、イメージを変えたというより見ること自体に作用しているというべきだろう。

長すぎることへの不満より画面が勝つことがある
天カス

天カスの感想・評価

4.0
愛に満ちたおとぎ話であると同時に「映画」ってなに?なぜ我々はそれに魅せられるの?という映画でもある。
フィルムの中に真実は存在する。

子供たちはみんなメッシになれるし、犬たちは揃ってワールドカップを観戦する。こんな世界あってもいいじゃん。映画なのだからという遊び心。
その遊び心を持った映画をみることで、現実でのある種の呪いが解かれるようなメタ的な感覚もあった。

観客のことを当然忘れていない、全く観たことのないテロップの使い方にも驚いた。
ジョージアを舞台にした(ちょっと不思議な)小話を紡いだ短編集って感じ。映画の進むべき道を示す語り部的なナレーションとあえて過剰に鳴らす音楽。ここまで映したい角度が偏っていると、それはそれで避けられ削られた物語や人物が不意に漏らしてしまう台詞などが欲しくなる。ホン・サンス、ミゲル・ゴメスの影響もそれなりに。閉鎖的な社会を嘆き「映画」の広がり(可能性)を信じているであろう作家、それはそれで否定はしないが俺はそこまで楽観的になれないので。東京フィルメックスオンライン配信で1700円。
めちゃめちゃ良かった。

とても長い時間を過ごしたような気がする
観客に任せる映画ってけっこうあると思うのだけれど、この映画はすごく、頼ってくれているという感じがした

街も空間も人も動物もみんないたな

動物がすごくいい仕事をする
鳥たちの空気の読み方すごい

たくさんの顔と足

そうか世界ってこうだよな

グルジア語の文字
eigajikou

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4.0
今年も東京国際映画祭と被っていたフィルメックス。
フィルメックスは配信で見れる作品は配信で見ようと思っていたけど結局配信で見たのは本作だけになってしまった。
(見る時間確保と予算問題)

配信だと集中力が続かなくて残念だった。
スクリーンで見たかったな。

フィクションだよってモノローグですごく主張しているのに映像がそれを感じさせない力を持っている不思議なバランスの作品だった。
子どもたち、犬たちが名演なんだけどどうやって撮ったんだろ。
足元だけを捉えた男女2人の現実離れした出会い、超ロングショットでの2人の再会、話しかけてくる木、監視カメラ、雨どい、風、告げられる呪い、観客への奇妙な注意喚起、そして、2人の外見が朝になると変わっているという呪いの実現、ここまでのあまりにも素っ気ない演出と、それ以後のひたすらナラティブの経済性から逸脱を繰り返し、都市とサッカーの蘊蓄を語る冗長な語りとが対比になっている。いつの間にか見た目が変わってしまった男女の再会はどうでもいいものとなっており、W杯の熱狂に包まれた都市の様子がドキュメンタリーとも思えるようなやり方で延々と映し出され、そして、半ば唐突に2人にかけられた呪いは、映画装置のもとで解かれることになる。あまりにも冗長なヴォイスオーヴァー、つまり語ることと、常にそのヴォイスオーヴァー以上のものを映し出す映像、つまり見せることとの対立がこの作品の原理となっており、だからこそ、最後のある種のマジックは、語ることの見せることへの屈服を意味し、ヴォイスオーヴァーは最終的に、なぜこんなことが起こるのかわからないと降参する。ブレッソン〜ゲリンに至る断片化の伝統のもとにあるようで、そうした厳格さとは程遠いところにある、ふざけたユーモラスな感覚が映画全体を包み込んでおり、作家の被写体と映画への愛が結実した作品になっていると思う。
東京フィルメックス最優秀作品賞
ジョージアのアレクサンドレ・コベリゼ監督
ある日何気ない通りで出会った男女が恋に落ちる。ただ次の日、彼らは不思議な力によって容姿が別人になってしまう

映画の持つ力を信じている作品です、めちゃ良かった。
「男女の恋が障害に立ち向かう」というよくあるテーマを、ユーモラスな描写と脚本で描いています。
この人の手法は悪く言えば「逆張り」となるかもしれないけど、それは映画への愛と挑戦心から産まれた純粋さゆえの行為だと感じられる。ショットはばちばちに決まっているし、特に前半の方とかフランス映画と見紛うような演出でした。不思議な力は観客にさえ伝播するのもワクワクする。演技や表情を廃する姿勢は様々な映画監督の源流がジョージアに行き着いたものでしょうが、その姿勢に徹するわけでもなく色んなスタイルを織り交ぜていたのも印象的

とはいえあと15分は短くできなかっただろうか、、笑
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