GreenT

アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイドのGreenTのレビュー・感想・評価

2.5
主人公のアルマは考古学者で、粘土板に書かれた象形文字?みたいのを翻訳する仕事をしている。上司に3週間アンドロイド恋人のテストをすれば、粘土板を見に行く旅費を出してやると言われて承諾する。

アンドロイド恋人のトムを演じるのがダン・スティーブンスという俳優なのですが、『ザ・ゲスト』というアメリカB級映画で際立っていたので、ドイツの映画に、しかもアンドロイドの役!ということで俄然興味が沸きました。

まーそしたらやっぱり!機械っぽいところがめちゃ笑えて、最初の15分くらい面白かったです。

これiMDbでも7.1/10とすごい評判良くて、例えば

「オリジナル、詩的、そしてディープな作品。ロマンティックなストーリーはブリリアントだし、哲学的で、ヒューマニティとはなんなのか、ロボットは人間を幸せにできるのかなど、色々考えさせられる。」

とかって言われているのですが、私は「?」って思いました。

だって、アルマって女の人、最初からアンドロイドに懐疑的なんですもん。なんかどーも、最初にアルマがアンケートに答え、その個人情報を元にアルマを幸せにするためにプログラムされたアンドロイドを作り、それをテストするってことらしいのですが、寝室は別、一緒に行動しないで、コーヒーショップで一日待たせたりする。

トムの寝室は物置きなんですよ!しかも雨の中何時間も待たせる。「でも機械だから何も感じてないんでしょ」みたいな・・・。お前のヒューマニティを疑うよ!

アルマが家で一生懸命仕事をしていると、トムはお風呂にバラの花びらを浮かべ、「少しリラックスした方がいいよ」と言うんだけど、するとアルマはそういう歯が浮くような行為に逆ギレする。

「ドイツ人女性の98%がロマンチックなお風呂を男性に用意してもらいたがっている」っていう統計からこういうプログラムがされているらしいのだが、これは「アルマ個人用」ではないよね?こういう「一般的」なプログラムは成功しないってことだ。でもこれは「ロボットは人間を幸せにできるのか」とは関係ない。生身の男でもこういう浅はかなことをすることはある。

アルマが明らかにトムを拒絶しているのは、この歳まで独りモンなんだから、多分過去になにかあったせい?それか、3週間のテスト期間が終わったら返さなくちゃならないのに、恋に落ちちゃったら後が辛いから、とか「いわゆる恋愛トラウマ」で心を閉ざしちゃってるってことなんだろうけど、相手に対する思いやりはないのかね?

だってトムは、そんな「自分を必要としていない」人にテストされ、テスト結果「アンドロイドなんてダメ」ってダメ出しされたらどういう運命が待っているのだろう?って思わないのかな?ロボットだから、感情がないからいいの?私はぬいぐるみとかでも捨てたりできない。「作り物でも情が湧く」ってのが「ヒューマニティ」なんじゃないのかなあ。

アルマは「自分を幸せにするためにパーフェクトにプログラムされた機械で人間は幸せにならない。ヒューマニティとは『幸せになりたい』と常に追い求めることだから」とかって言うんだけど、私は違うと思うなあ。

まず、アンドロイドのプログラムの仕方が間違ってるでしょ。「ドイツ人女性の98%が・・・」みたいな統計でプログラムされても「歯が浮く」ような感じになっちゃう。もっとパーソナルだったとしても、アルマが好きな詩を憶えている、とか、そういうことではないし。

容姿が好み通りに作られているっていうのも、それは最初の「魅かれる」要素ではあるけど、長期の幸せ要素ではない。好きな詩とかそういうのも、最初のコネクトには重要かもしれないけど・・・。そんなの人間同士の恋愛で十分分かっていることではないか。

この時点でこのアンドロイドは「幸せ」のためにプログラムされていない。

しかし例えプログラムが完璧だったとしても、「自分を幸せにするためにプログラムされたアンドロイド」では、人は幸せになれないと思う。だって、人の幸せっていうのは「自分が相手を幸せにできた」って思えたときに感じるものだと思うんだよね。

だからアルマのような人間は、相手が機械だろうと生身の男だろうと、幸せにはなれない。だって自分が相手を幸せにしようと思ってないんだもん。

アルマの恋愛のトラウマ、喪失感や将来に対する不安も徐々に明らかになっていき、それで恋に落ちたくないって抗う気持ちは分かるけど、それがトムを邪険に扱う正当な理由にならないので、主人公があまり好きになれない。

アルマが最後アンドロイドを受け入れたのか、受け入れないのか、曖昧な描写でバサっと終わるのはなかなか面白い作りだったけど、そもそも模索しているテーマがハッキリしないのでインパクトは弱かった。
GreenT

GreenT