りょう

アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイドのりょうのレビュー・感想・評価

3.4
 恋人がアンドロイドとかサイボーグとかAIとかの映画はいくつもあると思います。まだまだ架空の物語なので、荒唐無稽なものになりがちですが、この作品は少しニュアンスが違いました。
 アンドロイドのトムは、当然のように驚異的な頭脳はありますが、人間離れした身体能力とかは発揮しないし、そもそも現代社会を舞台にしてSF的な要素が排除されているので、かなりリアリティがあります。アンドロイド目線の画像があったり、機械の一部が露出した表現もなく、純粋なヒューマンドラマとして安心して観ていられます。妙にコメディ路線でもなく、エンタメ志向でもないところが好印象でした。
 人生のパートナーとなるアンドロイドの実証実験に参加しているアルマは、ほとんど恋人を必要としておらず、何なら1人になりたがっています。ただ、こんなにも自分だけに都合のいい理想的なパートナーがいたらどんなにいいかと思いました。人間臭い曖昧なやりとりも大切かもしれませんが、いつも正確で必要な情報が提供される会話をしてみたいものです。
 一方で、アルマも指摘していましたが、そんなことばかりでは、自ら思考したり失敗から学習したりすることもないまま、人間性を喪失することになりそうです。そんな説教臭い表現もありませんが、人間社会にAIが標準装備されつつある現代社会で、すでに彼ら彼女らと調和と共存を図っていく時代になってるはずです。
 トムを演じたダン・スティーヴンスはイギリス人のようですが、舞台も言語もドイツという純度100%の映画を久しぶりに観た気がしました。
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