傑作。
まず室内場面のカメラの置き方が良い。その場面の始まりや別の部屋にいる人物からの視点に繋がれる時、多くの場合カメラは部屋の中ではなく、扉の外からその部屋の中を構図内構図のように撮り納めてるか、或いは手前に何か枠になる物を配置している。こうした被写体との空間的距離を表すカメラの配置が、登場人物間の"分断"している感覚を助長するだろう。
それは切り返しにおいても同様で、極めて厳格な内側からの切り返しが"分断"された感覚をいや増す。実際、現代映画においてここまで切り返しがスリリングな作品はそう見つからない。クライマックスに一番の切り返しを持ってくるのもストロングポイントの一つだ。
亡き夫の墓前やモルグの切り取り方、ロングショット単体の強さにも優れている。それはやはり前述のフレーム内フレームに因るものでもあるし、端的にカメラ位置が的確ということもある。