順慶

きみが死んだあとでの順慶のレビュー・感想・評価

きみが死んだあとで(2021年製作の映画)
4.1
1967年の羽田闘争。いわゆる学生運動で機動隊と激突。で、18歳で亡くなった山崎博昭の人物にせまる200分のドキュメンタリー。
この時代になぜかあこがれに似た感じが、ずっとある。思想的にではない。あれだけの情熱をもって行動したことがかっこいいと感じる。

大友良英の心をかき乱すような音楽。どこにも着地しない感じで、不安感が残る。

これは東京の話だと思っていたら関西の話だった。大手前高校の同級生たちの話で、急に身近に感じた。
インタビューもだいたい耳馴染みのある関西弁。

で、タイトルの「死んだあとで」を考える。

中でも佐々木さんと岩脇さんは、終始笑顔で、当時を懐かしみながら楽しそうに語る。ユーモアもある。このふたりだけをみると、ある種の青春映画のようにも感じた。
ふたりはいろいろ考えてその上で、「いつまでやる?」のセリフにぐっときた。
中核派を早く辞めていたから、すべて思い出になっているのかもしれない。
それから京都の街を歩いたエピソードは心に残る。

岡さんは、京都に戻ると悪夢をうなされる。死んだ友だちの夢を鮮明に語る。

山崎博昭の兄山崎樹夫さんが語る弟が、一番客観的だと思った。思想的ではないので、単に亡くなった弟として語っている。
でも、忘れさせてはいけないという優しい思いも感じた。
印象に残るのは、山崎博昭の丁寧な文字だ。それからお母さんの家計簿の隅に書いてある日記も。

事実としてこの事件を語り続けるという意味で、この映画は見てよかった。知っておくべきことだとも思う。
機動隊に立ち向かう学生たち。それで国は動いたのだろうか。国は動かなくても、学生たちが動いた意味はある。

しかし、映画としてはとてもおもしろかったが、この手の話にいつも感じるのは学生運動の美化だ。監督は美化し過ぎていると感じた。
順慶

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