回想シーンでご飯3杯いける

明け方の若者たちの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

明け方の若者たち(2021年製作の映画)
3.0
'80年代を舞台にした「横道世之介」や「グミ・チョコレート・パイン」を筆頭に、各時代を生きた若者たちの姿を地域色豊かに描いた作品には魅力的なものが多く、最近だと「花束みたいな恋をした」や「劇場」辺りがとても印象に残った。

それら作品に共通するのは、ラストシーンが現代の大人になった主人公の姿で締めくくられている事。青春時代の経験は、大人になった自分にとって重要な意味を持っているという認識は、時代が変わっても揺るがない部分なのだろう。

さて、本作は2010年代を生きた男女の姿を中心に描かれている。大企業に入ったものの、希望の部署に配属されず「こんなはずじゃなかった」と悩んでいる「僕」を演じるのは北村匠海。これまで恵まれたモテ男を演じる事が多かった彼にとっては、本作の冴えない人物像はとても珍しいと思うのだが、役を上手くこなしている。その恋人を演じるのは黒島結菜だ。

「僕」の挫折や、それを支える同期との友情を描いた青春物語としては非常に良いと思う。タイトル通り、オール後の明け方の空気であるとか、こういうのは何度見ても切なくて胸が高鳴る。

しかし、恋愛パートに於いて中盤で明らかになる恋人の秘密以降は、その事実を観客に明かさなかった小賢しさも相まって、何とも安っぽく感じた。以降の「僕」は基本メソメソ泣いているばかり。これ、20年前だと男女の役どころが逆だったと思うんだけど、時代が変わったという事なのだろう。それにしても何とも尻すぼみな後半が残念だった。

原作もこんな感じだったという事なのか、あるいは映画公開時の監督がまだ23歳という事で、青春を振り返るには時期尚早だったのかもしれない。30才過ぎの主人公が「俺、老けたよ」って、おいおい、気が早すぎ。