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ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ 4K 完全無修正版のatsushiのレビュー・感想・評価

3.8
2022/02/28 1回目
【2022年100本目】
セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンのデュエットによる同名楽曲を基にゲンズブール自身がメガホンを取って映画化。

社会の器から溢れた人々を掬い取っていく。ちょうど劇中の青年たちがごみ収集をするがごとく(言わずもがな、"社会のゴミ"という訳ではない)。昨今ようやっと改善されてきたLGBTQや人種の描き方において、時代がとうとうセルジュ・ゲンズブールの感覚に追いついてきたということか。ここだけ見るとゲンズブールが聖人のように見えるかもしれませんが、この映画は少し歪なのです。その歪さがまた魅力なのですが。と言うのも、体感ではフィルムの半分くらいは、当時ゲンズブールの事実上の妻だったジェーン・バーキンの裸なのです。只々愛する人の美しさをフィルムに焼き付けた、監督セルジュ・ゲンズブールの偏愛映画といったほうが正しいかもしれません。しかし、牧歌的なステージに、ジェーン・バーキンの肉体美とテーマ曲があるのみなのに、こんなに観れてしまうのは、この3要素がいかにパワーを持っているか。ラストカットを観終えた私も、心の中で膝をついていました。

製作の年代的にもヌーヴェル・ヴァーグやニューシネマに影響を受けていると思いますが、その発端とも言うべきフランソワ・トリュフォーの言葉が素敵だったので引用して締めましょう。

"私の作品より『ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ』を観ろ。あの作品こそ芸術作品だ"
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