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映画:フィッシュマンズのこへのネタバレレビュー・内容・結末

映画:フィッシュマンズ(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

20年以上も前の事だと感じさせない、鮮明なエピソードの数々。
空中キャンプは一つのことをずっと歌ってるのに、曲が途切れる瞬間が嫌だったから一続きのLONG SEASONを作ったとか、fishmansは実際売れてなかったとメンバーの口から語られたりとか、ポリドール移籍後1年1枚だとたかが知れてる予算しか得られないから2年で3枚という契約にしたことでワイキキビーチスタジオの立上げに繋がったとか、小嶋さんやハカセ自身による脱退に関する言及とか。

中でもずっと近くにいたマネージャーさんだからこそ聞ける佐藤さんの言葉は印象深い。
「自分たちのやっている音楽は多くの人に響くとは思わないけど、それでも人生を変えるぐらいの力があると信じている。」
ある時はマネージャーさんに向かって、「どうせお前も辞めるんだろ、みんな辞めないとは言っても結局離れていくんだ。」
佐藤さんは何度も別れを経験して心に傷を負っていた。ハカセや譲さんが脱退するときに佐藤さんは怒っていたそう。読んできた本ではそのことは書いてなかった。

宇宙日本世田谷では佐藤さんの作るデモの完成度が高くアレンジの余地がなかった。それがメンバーに疎外感を感じさせてしまっていた。"Weather Report"に至ってはエンジニアであるはずのZAKがデモにベースを入れていたそう。最後のツアーとなってしまった男達の別れでもセットリスト落ちしている。

同ツアーのmcで、「10年後には誰が残ってるだろうね」って、作品に結果が伴ってきた時期に結成メンバーの譲さんも脱退を発表してしまい、泣きそうな顔で弱音を口走った後に"In The Flight"を歌う場面は涙無しには見れなかった。
「ドアの外で思ったんだ あと10年たったら何でもできそうな気がするって でもやっぱりそんなのウソさ やっぱり何も出来ないよ 僕はいつまでも何も出来ないだろう」
デビュー曲の"ひこうき"からの流れも、「あの日のまま」を渇望しているようで切ない。

98年の12月にツアーを終え夏頃にはライブを再開すると告げるも、それを迎えることなく翌3月に佐藤さんは帰らぬ人となる。
fishmansの重厚な歴史を辿る好ドキュメンタリー。クオリティー高かったです。
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