るるびっち

鳩の撃退法のるるびっちのレビュー・感想・評価

鳩の撃退法(2021年製作の映画)
3.3
どこまでが小説内の話で、どこからが現実か。
どこまでが嘘で、どこからが本当か。
なんて言ってますが、結局これ全て創作物なので全部嘘です。
全部作り物。だからどこまでが嘘で、どこからが真実かなんて考えたって意味ない。時間の無駄。
『三匹の子豚』とか『赤ずきんちゃん』と同じ。
『三匹の子豚』のどこが本当かなんて考えないでしょう。
失踪事件があったのは本当だろう、しかし主人公の小説家が彼らと遭遇したのは都合の良い嘘なのでは? 
何て推測するのは、豚が狼を殺すのはありえないだろう、しかし現実にレンガの家はあったかもしれないと、考えるのと一緒でアホらしい。

一家失踪事件と偽札事件と街のフィクサー。
それらをただ繋げるのではなく、作家という主人公の体験話として書いている。
それはシャーロック・ホームズが事件を解決するのをただ書くのではなく、側で見聞きした医師兼作家のワトソンの記述という構造と同じ。
小説家は小説の中では神様なので、話をハッピーエンドにもバッドエンドにも出来る。そんなことで感動しても仕方がない。
そして反則だと思うのは、フィクサー倉田の存在。
結局、倉田のさじ加減一つ。
実力者倉田はドラえもんと同じ。街の中なら、何でも実現可能な便利アイテム。
だから謎とか考えても仕方ない。ドラえもん倉田が、何でも可能にしてくれるよ。

映画を観て、またいつもの妄想癖が起こってしまった。
この話は、失踪事件と偽札事件はどう繋がるかを探る部分はミスリードで、結局偽札3万円が誰から誰の手に渡り歩いたかというのに趣向を凝らしたもの。
だったら謎の連続殺人事件のトリックに、「渡った紙幣」を使った方が面白いのではと思った。

謎の連続殺人事件が起こる。
被害者達に共通性も関連性もない。動機も分からない。
捜査の結果、紙幣が介在していると解る。
人から人へ渡った紙幣に毒が塗られていて、手にした人が死んでいたのだ。
毒は進行の遅いものだった為、紙幣が他人の手に渡るだけの時間が確保できた。
しかし、紙幣を手にした全員が死ぬ訳ではない謎が残った。
実は指を舐めて紙幣を数える人だけが死ぬのだ。なので老人が多かった。
そういうトリックのミステリーとして、作れたのではないか。

でもネタばらしした時に、面白いと思うか下らないと思うか。
そんな札に毒のトリックなんて、詰まらないという意見も多いだろう。
だったらオチを限定しない謎めいた終わりの方が、文句言われないかも知れない。
だから、あの結論なのかな。
ミステリーとして勝負に逃げた、はぐらかし作品。
ちなみに鳩の撃退というのは、劇中で説明している件以外に、何でも深読みをする読者を撃退するという意味で使われていると思う。
だから深読みする人ほど、どこまでが真実か・・・と穴に落ちるのだ。
『三匹の子豚』の真実と嘘を分けても仕方ないから。撃退されてるよ。
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