石井裕也監督、脚本、尾野真千子主演によるドラマ。
交通事故で夫を亡くし、中学生の息子と暮らす母親の姿を描く。
冒頭、オダギリジョー演じる亡き夫が事故死する衝撃のシーンでスタートするが、その事故が、明らかに池袋で起きた某暴走事故を彷彿とさせるものであるため、本作品が只者ではないことを突きつけられる。
その後も、尾野と和田庵演じる母子に負の連鎖とも言えるような出来事が降り注ぐが、「ま、がんばりましょ」と口にすることで怒りをコントロールし、昼も夜も身を粉にして奮闘する母親、良子を尾野が圧倒的な演技力で表現。
良子が働く風俗店の同僚を片山友希、店長を永瀬正敏が演じているが、永瀬の本作品のポジションや立ち振る舞いは、アウトローのカッコ良さが溢れ出ており、登場する男性陣が推し並べてポンコツだらけの中、一筋の輝きを放つとともに、登場シーンは少ないものの、鶴見辰吾や嶋田久作、前田亜希等が出演し、個性派として印象を残している。
また、マスクやソーシャルディスタンスといったコロナ禍での日常風景や前述の事故のように時代を如実に切り取って、様々な格差を表現しているのも映画ならではのもの。
奇しくも、観終わって見上げた空は、夕刻の薄茜色。
この茜色をどこかで同じように見上げながら、日々をしなやかに生きる人々がいることを感じることができる一作。
いつもルールと言うルールに裏切られる。
