映画好きの柴犬

茜色に焼かれるの映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
4.0
金は大事だけど、金より大事なものもある

 夫(オダギリジョー)をブレーキ踏み間違い事故で亡くしたシングルマザー田中良子(尾野真千子)が、理不尽な社会に立ち向かいながら生きていく様を描く、ヒューマンドラマ。

 石井裕也監督作の中で一番好きかも。主人公良子に次々と降り掛かる理不尽を、社会問題として声高に叫ぶわけではなく、そんな社会に意地張って生きている良子の生き様を、ちょっと優しい視線で描き出す。話は若干とっ散らかり気味で約2時間半と長く、完成度が高いとは言えないけれど、そのゆるさも含めて、主人公良子への優しさに感じられた。優しいテイストは「町田くんの世界」に近いけれど、強引にファンタジーに持っていかなかったのもよかった。

 良子の風俗での同僚で、様々な不幸に見舞われるケイ役の片山友希がすごく良かった。これまでも「ここは退屈迎えに来て」や「君が世界のはじまり」とかで、ちょっとアウトローな女の子を演じていて印象深かったけど、ネクストブレイク候補に躍り出た感じ。