さ

歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡のさのレビュー・感想・評価

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都市生活に浸りまくりの身としては、なんだか心が洗われて幼い頃の純粋さを取り戻すような、穏やかな心地がする映画。何より印象に残るのは全編にわたってヘルツォークからチャトウィンに向けられる優しい眼差し。愛情に満ち満ちたナレーションはラブレターを読んでいるかのよう。死後こんな風に友人が自分の足跡を辿ってくれたら嬉しくて死んでしまう。

上京して早7年、恥ずかしながら閉館に際して初岩波ホール。通常の興行では埋もれてしまう名作たちに光を当ててきたスクリーンを前に、なんだか勝手に居住まいを正してしまう。劇場としての歴史はここで潰えてしまうけど、観客たちの鑑賞体験はまたどこかで実を結ぶといい。
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