ダニエル・シュミット監督の文芸ロマンス。
1942年中立国スイスの首都ベルン。フランス領事館主催のパーティーに出席するフランス人外交官が、1930年代北アフリカ駐在時に狂うほど愛した女性に思いを馳せる。
「私は孤独だった。愛のない愛、愛の欠如そのものだ。」
外交官としての職務そっちのけで、異国の地で出会った素性の分からぬ美女に溺れていく、孤独な男の恋物語。情熱的で破滅的で、メランコリック。まさに、恋は病である。
ストーリーにはそれほど魅力を感じなかったが、ダニエル・シュミット監督の創る優美な世界観、幻想的な映像美には酔い痴れた。特に、ホテルの部屋の映像が絶品。暗がりの部屋に、青ガラスの透過光と緑色のタイル壁が良く映えた。歴史を感じる北アフリカの風景と、クラシカルなヨーロッパの文化が融合したロケーションや建物も魅力的だった。砂漠気候に適応した白ベースの衣装も、非常に洗練されていて美しい。
ワイン🍷の泡沫から回想劇。ファム・ファタール的女性クロチルドの素性がミステリー。
『アメリカン・ジゴロ』のローレン・ハットンの存在感。大人の女性の魅力で若い男を惹きつけ、惑わせるファム・ファタール的な役回り。。
ダニエル・シュミット監督作品は、日本では一定の人気があるようだが、海外での知名度は決して高くはないようだ。
「愛に無はない。」
「言葉はいつも遅い。早すぎることも。」
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