てづか

悪い奴ほどよく眠るのてづかのレビュー・感想・評価

悪い奴ほどよく眠る(1960年製作の映画)
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この映画、やるせなすぎる…!!!だが好きだ…!!!!

冒頭の結婚式のシーン。グルグルと色んな人たちを撮ってまわるカメラワークから、色んな人の色んな思惑が絡んでいるぞという不穏さが伝わってくる。

西が和田に聞かせるカセットテープの音楽がすごく軽快で楽しい音楽なのに対して、そのテープの中で繰り広げられる会話はものすごくどす黒いのがめちゃ怖かった。

悪いことが行われている時の音楽がなんとなく小粋でカッコイイことが多くて、金庫係の人が金を確認しに行くシーンのジャズ?みたいな音楽とかは特にちょっと間抜けさも感じさせる曲なんだけどなんかグルーヴィーで好きだなって感じた。志村喬さんを監禁しはじめてからのやりとりとそこで流れる音楽の喜劇感も超好き。

悪い奴が自分の家族にはものすごく良い人なところもなんとも言えずリアルな感じがして薄暗い気持ちになる。

あと個人的にちょっとツボっちゃったのが、三船の「乗りたまえ!」ってセリフ…😂
菊千代とかやってた三船を思うと「あんたそんな人やないや〜ん!」ってなっちゃうんだけど、そんな人も演じてちゃんとカッコイイのが凄いわあ。静かなる決闘のときの三船みたいで、こういう三船も超かっこいい!!あと、お友達役の加藤武さんもめちゃくちゃカッコイイ!顔と仕草が大好きです。

悪事に加担したくせに「許す」とつい口にしてしまうあたりの自覚のなさとかを見ると、どんなに悪事から遠く離れていても加担はしているんだぞという戒めを感じる。

復讐は正義ではないというところも描いているところがこの映画の好きなところだなあと思う。
憎しみや恨みだけでなくそこにひとつ愛情が芽生えたことで迷いが生まれたり、そんな迷いを消すべく父親の死に顔の写真をずっと持っていたりという人物描写が丁寧で好き。

西夫婦のそれぞれの父親への愛情も、一筋縄ではいかない思いがどちらにもあってすごく良かった。親との関係って個人的にはものすごく響くテーマだからそこをちゃんと描写してくれてたのがたまらなく嬉しかった。

復讐は正義ではなくても、必要なことだからやるんだ。
復讐を忘れて生きた方がそりゃあ幸せかもしれない。それでも、そこに生まれた悲しみに決着をつけるためにはやるしかないのだ。さらなる悲しみを生むことになっても。

とはいえ、この映画は別に復讐劇自体を描いた映画ではないと思うけど…
なぜなら、そこまでやっても悪は簡単には倒れないのが現実であり、恐ろしいことに巨悪は巨悪のままにはびこり、のうのうとその後も生きていくであろうというのが本筋だろうから。

悪い奴ほどよく眠る。

そうして、日本中が騙される。ラストの加藤武さんの叫びには胸を打たれた。
いままで明るかった音楽も、ラストはどん底のような暗さを醸し出す。
うわあ〜なんとも恐ろしい映画。

良き胃もたれ映画でした!!!
てづか

てづか