Ryo

悪い奴ほどよく眠るのRyoのレビュー・感想・評価

悪い奴ほどよく眠る(1960年製作の映画)
4.5
「俺は憎しみが足りん。悪を憎むのは難しい。憎しみを掻き立てて悪にならなければならない」

黒澤明現代劇の傑作。流石の一言です。今の社会にも匹敵する社会の醜さや汚さを表しています。

黒澤監督の言いたい事は、日本人が主人公の正義感、勇気、慎重という侍精神を学んで、『悪い奴がよく眠れる』環境を作った当時の日本社会と戦うべきだということだ。

しかし正義を貫きそうとする奴が悪から狙われる。だからこういう英雄的存在はなかなか出てこないし現社会の悪は滅ばないことを表している。

実際、巨大な権力の前では個人の動きなどは蚊に噛まれたくらいにしか思わないでしょう。副総裁が作中に何度か電話で話しラスト・シーンでも電話している相手(黒幕)は作品中、一度も姿を現しません。副総裁も所詮、小物でしかなく、巨悪には全く手が届いていないことが明らかになる。

結婚式の場面を借りて、そこに居並ぶ人々の登場人物たちの相関関係が紹介されるアイデアはゴッドファーザーでもオマージュされてます。


ー悪い奴ほど良く眠るの意味ー
本当に悪い奴というのは、表には出ません。
手下を使って悪いことをします。人の目の届かぬ所で、罪を負うこと無くのうのうと枕を高くして寝ているとの意味です。

ラスト、夜昼を間違えついお休みなさいと言ってしまった副総裁。タイトルを思わせる素晴らしい一言。
Ryo

Ryo