《キウンクエ蔵前》に越してきた年の差カップルの菜奈ちゃん（原田知世）と翔太くん（田中圭）。住民会に参加した翔太の一言で《交換殺人ゲーム》は行われず、住民たちは良好（？）な関係を維持したまま二年の歳月が経過した。豪華客船で翔太と菜奈の結婚披露パーティーが催されることとなるが、ハレの日の夜、遂に事件が起こってしまう。
◆人気ドラマのifの世界
連ドラとしては珍しく２クールに渡って放送され、考察ブームが社会現象にもなった《あな番》の愛称でも知られるドラマ【あなたの番です】の劇場版。《もしもあの住民会に参加したのが菜奈ちゃんではなく翔太くんだったら〜》というifの世界が描かれています。
マンシヨン管理人（竹中直人）の一言がきっかけで《交換殺人ゲーム》が議題にあがった住民会。ドラマではここから血みどろの交換殺人ゲームが幕を開け、毎週バンバン登場人物が殺られていきました。曲者だらけのキャラクターと、毎回急ハンドルを切るミスリードで、考察とかしなくても（秋元康企画、乃木坂出身の俳優が出演している時点でちょっとお察しでしたが）毎週楽しみに見ていました。huluの圧がエグかったのはいい思い出。
翔太の一言で《交換殺人ゲーム》企画は頓挫しましたが、個性豊かなキャラクターたちの性格とか過去とか設定はそのまま引き継がれており、所々でドラマを思い起こさせる小ネタとか演出が入っているのも面白かった。作品の持つバイタリティに対して尺が圧倒的に足りていないので、ちょい役に徹するキャラが多かったり、満足度が腹八分目なのはご愛嬌。
◆やすす'sドヤ顔★エンタメショー
クセが強い人気キャラクターを引っ張り出した今作。人数が多い事に加えて豪華客船に集合→結婚披露パーティーでの宴席→海中バーでの二次会という流れが雰囲気を作ってくれていたので、ちょっとした同窓会気分で鑑賞していました。そして〝ふぅっ〟と一息ついたタイミングで事件が起きるコテコテのエンタメ感。いいですね〜。
ドラマでは【反撃編】から《翔太くんがAIを研究している大学生どーやん（横浜流星）とタッグを組んで真犯人を暴いていく》というプロットでしたが、劇場版では後半から《どーやんと菜奈ちゃんがタッグを組んで、翔太くんの疑いを晴らす》という、ドラマ版を反転させたような展開になったあたり秋元康のドヤ顔をが脳裏を掠めました。
劇場版から投入された門脇麦の設定と起用の仕方は悪く無いです。現在人気上昇中の実力派俳優ですが、彼女が一人で中身を掻っ攫っていかずに、うまいことアシストに徹していました。先日のドイツ戦で途中出場作した三笘のようなナイス役所。…何の例え？
連ドラ【あなたの番です】で、怪しげなマンション住人の尾野幹葉を演じた《奈緒》と、事件を捜査する刑事の神谷将人を演じた《浅香航大》。本ドラマの出演をきっかけに一躍ブレイクした二人の俳優が演じたキャラクターに、劇場版でサプライズ演出が用意されていました。これも『粋』というより、やすすのドヤ顔が想起されてしまう『あざとい』感じが強かったです。
何はともあれ、《交換殺人ゲーム》が起こらなかったことで、多くのキャラクターが不幸にならずに済みました。《『法律で禁止されれているから』ではなく、『その人を愛している誰かが必ずいるから』殺人はだめなんだ！》というちょっと説教くさい台詞で終幕しましたが、ifの世界のみんなはこのまま仲良く暮らしてください。
