ヒノモト

パトニー・スウォープのヒノモトのレビュー・感想・評価

パトニー・スウォープ(1969年製作の映画)
3.7
昨年亡くなったロバート・ダウニー(シニア)監督の1969年の風刺コメディ作品。
中原昌也さんのトーク付き上映を観てきました。

率直に難しかったです。
観ることのできなかった作品をレストアして、字幕付きで観られること自体はありがたいのですが、当時の時代背景と今作のシチュエーションと台詞に込められたシニカルさにコメディの要素が重なると、脳内変換しながら素直に笑えるかというと難しいところもありました。

物語は、広告代理店の取締役会議中に亡くなった最高経営責任者の代わりとなる次期社長の投票によって、取締役で唯一の黒人男性であるパトニー・スウォープに票が集まり社長となり、大胆な改革を行っていくというお話。

最も特徴的なのは、ドラマ部分はモノクロなのですが、スウォープが手がけた革新的なCMだけがカラーで表現されていることで、大胆でインパクトの強い広告は、物語を左右する大きなファクターになるのですが、ここは大変印象に残りました。

ただ、映画全体としては後のスパイク・リー監督作品のような黒人文化的主張が強い作品ではなく、広告業界におけるお金の生み出し方に対するアンチテーゼの部分が強く、必ずしも黒人だからこその主張ではない感じでした。

あとは、皮肉めいた笑いを生み出す芝居や間合いは、今の感覚で観ると少し受け入れがたいところが多くて、周囲では笑い声が起きてましたが、個人的には笑うところまでは至らなかったです。

それでも大胆な構成の作品でインデペンデントだからできる表現であふれていて、レイトショー上映での脳内フル回転で疲れましたし、上映後の中原昌也さんのお話も貴重で面白かったです。

パンフレットの情報量もすごくて、資料的価値は高かったです。
スウォープの声をロバート・ダウニー・シニアが吹き替えしていた事実には驚かされました。
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