ヴェルヴェっちょ

ノーカントリーのヴェルヴェっちょのレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
3.8
懲りずにコーエン兄弟の作品にチャレンジ。「ファーゴ」と全然ちがった!

1980年、テキサス。ベトナム帰還兵のルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)は、荒野で死体たちに囲まれた200万ドル詰めのトランクを発見する。 それを奪うことがどれだけ危険な事態を引き起こすかも予測しながら、誘惑に負けた彼はトランクを抱えて車で逃走した。
追っ手から、タイヤと肩を撃たれながらも自宅に戻ったモスは、妻のカーラにメキシコの実家へ帰るよう命じて、自身も逃亡の旅に出る。
消えた大金を取り戻すために雇われたのは、オカッパ頭の殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)だった。手錠を嵌められても鎖で保安官を絞め殺した殺人鬼である彼は、特製エアガンと散弾銃を手にしていた。そして、トランク内に設置された発信器からの信号を察知して、モスの行方を追いかける。
感情を表に出さないシガーは、顔を知られた人間を次々と情け無用に殺害してゆく…。

大袈裟に聞こえるかもしれませんが、殺人鬼のアントン・シガーは、映画史に名を刻む悪役だと思います。
怖ろしすぎて彼が登場すると動悸を抑えられない。彼がこの映画を無二の作品たらしめている。アカデミー賞助演男優賞にも異論なし。

冷酷無比な殺人鬼による圧倒的な暴力。何が恐ろしいって、コミュニケーションが全く成り立たず、一方的に殺すこと。被害者たちは言う。「殺す必要はない」と。言葉は理解しているはずのシガーだが、次の瞬間、発砲する。そう、感情がない。

コーエン兄弟作品の共通項をなかなか見出せずにいますが、強いて言えば「手加減のなさ」でしょうか。「ファーゴ」では徹底的にシュールに。この映画ではこの上なく残酷に。