タケオ

真夜中乙女戦争のタケオのレビュー・感想・評価

真夜中乙女戦争(2021年製作の映画)
3.6
-これは日本版『ドニー・ダーコ』だ!『真夜中乙女戦争』(21年)-

 まだ何者にもなれていない。にも関わらず、根拠のない謎の全能感だけは無駄に高い。そんな頭空っぽな若者のパンパンに膨れ上がった「自我」と「妄想」をそのまま映像にしたかのような作品である。
 演技、演出、脚本、音楽、撮影に至るまで、とにかく全てが青臭く、観ていて本当に小っ恥ずかしい気持ちにさせられた。しかしこと本作においては、そんな小っ恥ずかしさこそが作品のテーマとも直結しており、(ギリギリのラインではあるが)あまり気にはならない。というのも、「どいつもこいつもバカばっかり、この腐った世界が大嫌いだ!!」と叫ぶ頭空っぽな若者なんてそもそも見ていて小っ恥ずかしい気持ちにさせられる存在だし、とはいえ、その小っ恥ずかしい精神性は全く他人事ではないからだ。まだ何者にもなれていない若者たちの頭空っぽなりの「鬱屈」と「絶望」を真摯に描けている点にも好感が持てる。展開やキャラクター設定も含め『ファイト・クラブ』(99年)と比較されやすい本作だが、観るものを挑発するような皮肉や鋭い批評性はあまり含まれていないため、若者の独り善がりな精神世界をそのまま描いたという意味でいえば、どちらかというと『ドニー・ダーコ』(01年)に近いかもしれない。しかし、だからといって『ドニー・ダーコ』ほどの混沌とした雰囲気やビジュアル・ショックがあるわけではないので、その点に関してはやや食い足りなさを感じた。
 長ったらしい説明台詞やここぞという場面で「うわぁぁぁぁぁ」と絶叫する主人公など、邦画に有りがちなミスを多く犯している稚拙な作品であることは否定のしようがない。しかし、「ここ日本で『ファイト・クラブ』をやりたい!」という制作陣の無謀な試みをどうしても嫌いになれなかった。いかなる場合であれ、やはり「畜生みんな大嫌いだ、全部ぶっ壊れちまえ!!」と叫ぶ映画は常に大切なのである。
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