◆あらすじ◆
江戸で鍼医者として働く藤枝梅安(豊川悦司)には依頼を受けて暗殺を行う仕掛人という裏の顔があった。ある日、梅安に料亭・万七のおかみのおみの(天海祐希)の暗殺の依頼を受ける。一方、梅安の友人で仕掛人の彦次郎(片岡愛之助)にも依頼があり、彦次郎は難なくその暗殺を成功させるが、そこにも料亭・万七の関係者が関わっていた。梅安と彦次郎は暗殺の対象が本当に殺すべき相手か探り始める。
◆感想◆
本作は映像として高いクオリティを示すとともに実力派の俳優陣の出演により重厚かつ本格的な時代劇として制作されており、ストーリーや登場人物の難解さがあるものの、ストーリーが進むにつれてしっかりと分からなかった部分が解明していくとともに、仕掛人というイリーガルな存在の活躍をもって胸のすくようなラストへとつながっていて、満足できる出来になっていました。
ストーリーとして
(1)藤枝梅安が元締・羽沢の嘉兵衛(柳葉敏郎)から受けた料亭のおかみのおみのの仕掛けを行うストーリー
(2)梅安が偶然遭遇した浪人・石川友五郎(早乙女太一)が将軍家旗本・嶋田大学(板尾創路)の家来に追われるストーリー
(3)彦次郎が元締・田中屋久兵衛(大鷹明良)から受けた料亭・万七がらみの仕掛けを行うストーリー
の3つが主に並行して進んでいき、それが一つにつながっていく流れになっています。とにかく登場人物が多く、名前が把握しづらいですが、(1)のストーリーが本作の一番重要なものなので、これにのみ集中して観ても十分に楽しめると思います。また、本作の公式サイトには「人物相関図」が掲載されており、それを見ると名前だけでもかなり把握しやすくなると思うので、利用する価値があると思います。
藤枝梅安は表の顔として鍼医者として「先生」と呼ばれて町の人々と親しく付き合っており、料亭・万七の女中のおもん(菅野美穂)に好意を示す姿は魅力的な男性として描かれていました。一方、裏の顔では、暗殺の依頼を無感情にこなす仕掛人として存在しており、表裏のギャップが本作の見どころだと思います。
梅安は羽沢の嘉兵衛から料亭のおかみのおみのの暗殺を請け負いますが、かつてその料亭のおかみを暗殺した過去があり、浅からぬ因縁がありました。そして、梅安が下調べで万七へ赴き、おみのに会ったことでそのおみのとも梅安は関係があることが分かります。この関係が本作の肝になっており、終盤に感情の揺さぶられるシーンにつながっていて面白かったです。
(2)(3)のストーリーは島田大学と田中屋久兵衛、そしておみのの繋がりが鍵を握っていて、それが最終的に(1)のストーリーに収束していくようになっていて、幾重にも重ねられた出来事が一つの形になる時代劇の醍醐味を味わえるものとなっていました。
ただ、少し気になる部分もありまして、梅安も彦次郎も誰が手をかけたのか分からない「暗殺」を行う仕掛人でありながら、結構、町中で大っぴらに殺しており、いくら江戸時代とはいえ、さすがにバレないだろうかと思いました。また、元締から依頼を受けて仕掛けを行うのが仕掛人のルールのはずなのですが、2人とも結構、独自の判断で人を暗殺しており、仕掛人のイメージとずれているように感じました。とは言え、その人に死んでもらわないと観ている側として溜飲が下がらないので、必要な仕掛だったと思います。
時代劇というジャンルが衰退していく一方の中で、このような現在の映像クオリティで本作が作られたことは非常にうれしく、とても楽しめました。時代劇が好きな人が増えると嬉しいなあ。
鑑賞日:2024年8月2日
鑑賞方法:CS 時代劇専門チャンネル
(録画日:2023年9月24日)