MasaichiYaguchi

幕が下りたら会いましょうのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

幕が下りたら会いましょう(2021年製作の映画)
3.7
松井玲奈さんが映画単独初主演を果たした本作では、妹の急死に心を揺さぶられた売れない劇作家のヒロインが、その死を通して、或る切っ掛けで溝が出来た妹や親たちと向き合い、そこにある葛籐や苦悩を乗り越え、前を向いていくドラマが描かれていく。
実家の美容室を手伝いながら、鳴かず飛ばずの劇団「劇団50%」を主宰する麻奈美は、或る日、東京で働いていた妹・尚の死を知らされる。
尚が資材置場で亡くなった夜、劇団員の結婚祝いのために集まり馬鹿騒ぎをしていた麻奈美は、尚からの着信があったにも拘わらず電話を無視していた。
妹の死に複雑な思いを抱える麻奈美は、劇団仲間で親友の早苗と妹の部屋を引き払うために東京へ向かう。
この東京行きを契機に、麻奈美の尚や母・京子との確執と対峙せざる得なくなっていく。
この作品には麻奈美をはじめとして夢破れた人物が何人も登場する。
特に彼女が主宰する劇団員は役者だけでは食べていけず、アルバイトで糊口を凌いで生活している。
そして妹・尚が勤めている東京の会社にも問題があり、遠因ではあるが尚の死の原因の一つになっている。
昨年からのパンデミックは、演劇界にしろ映画界にしろ、興行系に携わる人々を廃業に追い込むまでに苦渋を強いている。
尚や母のこと、そして「戻りたい夜」と向き合い、自分との関係を見詰め直した麻奈美は、再び尚と繋がるべく、葛藤しながらも妹が作った唯一の舞台を再演しようとする。
人には取り返しのつかないことが起こる。
それでも、それを心に留めて、前を向いて生きて行かなくてはならない。
本作は決して派手でも明るい作品でもないが、登場人物たちの心の動きを繊細に描くことで我々に寄り添う物語を綴っている。