しん

ミュジコフィリアのしんのレビュー・感想・評価

ミュジコフィリア(2021年製作の映画)
2.5
現代音楽をマイルドにして、大衆映画にしようという試みは面白かったですが、「未(視)聴感」をコンセプトとするのであれば、テンプレート過ぎる二つの点が気になってしまいました。

一つは「音」です。自然音と人工音が絡み合うことを表現するのであれば、もう少し「雑音」を混ぜるべきなのではないでしょうか。本作では川のせせらぎや風の音がたくさん出てくる一方、車の音や人が囁く声など一般的に「雑音」と呼ばれるものが、外での演奏でもほとんど聞こえてきません。特に新型コロナウイルス感染症以後の映画館は比較的静かな空間なので、少し「雑音」を入れないと自然と人工の調和を目指すならば、この点はもう少し配慮して欲しかったです。

もう一つは人間関係、とりわけカップルや親子の関係がテンプレートかつ守旧的だったのが残念でした。勝手にやる男性とそれを許す女性という構図は、うまく皮肉ったり、展開すれば面白いのですが、「実はいい人」という感動ものとして描いてしまうとさめてしまいます。本作はまさにそうでした。

現代音楽を題材にするならば、やはりもう少し現代的で角の立つ物語にする必要があったかなと思います。
しん

しん