ノラネコの呑んで観るシネマ

葵ちゃんはやらせてくれないのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.1
映画監督志望の信吾のもとに、一年前に自殺した川下さんが幽霊になって現れる。
彼の心残りは、片想いだった後輩の葵ちゃんとやること。
二人は想いを遂げるため、唯一チャンスがあった10年前の大学時代にタイムスリップする。
設定はもの凄くくだらない。
映像も思いっきりチープなんだけど、なんだか切なくて、妙に心を削ってくる。
川下さんは言わば青春時代の”後悔”の、葵ちゃんは”残念”の象徴なんだな。
あの時、なぜ勇気を持って言えなかったのか。
たぶん誰の心にも、自分の川下さんと葵ちゃんがいる。
タイムループものの構造になっていて、川下さんは何度もチャレンジする。
だが自ら命を絶ってしまった彼にとって、性=生はもはや手が届かないもの。
そして何者にもなれるはずと、夢を語った大学時代と、現実に打ちのめされる10年後の現在のギャップ。
だからこそ信吾も、青春の亡霊を応援せざるを得ない。
青春時代の後悔と残念は、世知辛い世の中をそれでも生きてゆくための糧となる。
タイトルロールの葵ちゃんを演じる小槙まこが歌う、「川下さんがやってくる〜」というフレーズが頭から離れない。