ハル

先生、私の隣に座っていただけませんか?のハルのレビュー・感想・評価

3.6
舞台挨拶にて。

変わったテイストの作品だった。
監督の言葉にあった『心地よい混乱をもたらす』というニュアンスがピッタリ。

漫画の話をしているのかリアルの話なのか、現在進行している物語はどちらなのか、こういった迷いや戸惑いを常に感じさせつつ話が進んでいく。
一筋縄ではいかない展開に頭を悩ませつつ、鑑賞するのもたまには悪くないなと。

柄本佑、黒木華の夫婦役は両名とも実に自然な演技でセリフの一つ一つがすんなり染み渡る。
正に、実績ある役者の仕事ぶり。
また奈緒も抜群に良かった。
不倫をしてる当事者でありながらも、普通にみんなと関係性を維持している役どころ。
サッパリしたムードメーカー的なキャラクターを上手に表現していた。

そして、それは風吹ジュンも然り。
佐和子に母親の立場から投げかけた最後のセリフは女性として、母親として「この映画の全てを表す本質的な言葉」以外のなにものでもなかった。
親は何でもお見通し的な佇まい&その芝居の説得力に唸らされる。

本作品の流れとして、中盤から最後への道筋がとても興味深く、俊夫が一人になっても大丈夫なよう整えていく様に佐和子の優しさを感じられた。
恐らく、これまでの感謝も含め「許せないと決めた時点」で全て決めていた通りのプロセスを歩んだのだろう。
決定的なまでの強い決意と感謝を併せ持ちつつ、様々な事前準備をしていた事実を鑑みた時、佐和子の俊夫への「やり切れない気持ち」について共感せざるを得なかった。
ハル

ハル