くさむすび

エンドロールのつづきのくさむすびのレビュー・感想・評価

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)
4.4
素晴らしかった。劇中サマイがとある人物に恩返しをするように、冒頭のクレジットで出てくる名だたる映画監督への恩返し、愛を込めたような作品。昨年公開された『ラストサマーウォーズ』と通ずる点もあって、あちら側が映画を作る話ならこちらは映画を映すことに心血を注ぐ少年たちの話。サマイ少年メインの話だけど友達と協力して自作映写に取り組んだり、上映会での"音付け"シーンを通じて映画は一人で作るものじゃないというチームワークの連携、そして映写され観客に届き映画は初めて完成する。その事実をパン・ナリン監督は胸に刻んでいるように見えた。
スクリーンに映し出される光、物語を展開する光に魅了されたサマイがガラスを使って映画を再現したり、マッチ箱でストーリーを使って物語を作ったり、光を捕まえようとする行動には幼さが見えるがその後の行動は良くも悪くも成長が感じられて、単なる映画讃美ではなく映画を通じた一人の少年の成長譚が完成されていたのが良かった。
今作で一番印象的とも言えるとある物が失われていくシーン、残酷なまでにサマイが体験するその過程がホラー的に映されているのは凄く面白かった。現在失われつつある映画館体験にも通ずるものがあって、でも「過去は良かったのに」というノスタルジーに浸ることなくその後の展開は続いていく映画の未来への希望を見せてくれているような感じがする。
原題は『LAST FILM SHOW』邦題は『エンドロールのつづき』なのだが、個人的には後者の方が今作には合っていると思う。途中巻かれたフィルムが転がって足元で倒れるショットがあり、そこで映画に没頭できる人生は終了のように思えたけどそうではなくて、まだ人生は続くし映画への飽くなき探究も終わらない。
概ね良かったけど、もう少し親の心情は語ってほしかった。監督の半自伝的作品なのでどうしてもサマイメインに語りたくなるのは分かるが流石に足りなさすぎる。特に母親とか一番胸に秘めているものがありそうなのに全く語られず。そこさえ詳細に語られていれば☆5.0つけても良かった。
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