ユウサク

エンドロールのつづきのユウサクのレビュー・感想・評価

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)
3.6
イオンシネマ板橋は上下マスクも稼働してると聞いたけどシネスコの本作で動かなかったのでもうやめちゃったんだろうか。

『ニュー・シネマ・パラダイス』というよりは『シアター・プノンペン』の方が近い。映画の映画というより映画館の映画、フィルムの映画。1965年生まれのパン・ナリン監督の半自伝ということは70〜80年代の話になるので前半が監督の経験で後半のデジタルプロジェクターが入ってくる辺りは脚色なのかな?ちょっと早過ぎる気が。でも実際日本でもフィルム上映出来る映画館がとても少なくなっただけでなくパーツを作る会社がなくなって修理が難しくなったり、映写技師も減ったり、と同じようなことは起こっている。フィルムに関しては国立映画アーカイブがあって時には民家から昔の映画が発見されたり、アーカイブに努める機関があるわけだけどインドはそうでもない(なかった)のかな。先述の『シアター・プノンペン』では政府の検閲により該当箇所の削除どころかフィルムごと没収され雑に保管されてるシーンがあったけど、デジタルに移ったからフィルムも溶かしてアクセサリーにします、はちょっと考え方が乱暴過ぎないだろうか。フィルム缶が金属だから加工されるのはわかるけどフィルムは溶かしたらもう二度と元に戻らないのに。事実とのバランスが気になる。
あとは全体を覆う子どもに対する「未熟な存在」という考え方が引っかかる。木の棒で叩くとかは論外なんだけど父親からサマイを庇う母親でさえ頭を結構強い力で押すシーンが二度もあり、やめてほしかった。そもそもガッツリ労働させてるのもおかしい。ラストも子ども一人で都会に行かせて任せるのが友人っていうのも引っかかった。あのアクセサリーを見せつつ俳優・監督の名前を呼び上げていくシークエンスはフィルムが無くなっていくことを批判しているのか市井の女性が輝くならそれでいい、と思っているのかちょっとよくわからなかった。別にフィルムを溶かさなくても作れるものなんじゃないかと思うし……。

音楽を抜く演出は鉄板ながら響くものがある。オープニングタイトルはちょっとMCUぽかった。一番最後の仕掛けも映画館で見てないと白けるかも。2〜3年後にフィルム上映の企画があったりするかも。
ユウサク

ユウサク