白波

テーラー 人生の仕立て屋の白波のレビュー・感想・評価

テーラー 人生の仕立て屋(2020年製作の映画)
3.8
トレーラーで見せたふわっとしたファンタジックなお話ではなく、思ってたよりビターな人生賛歌でした。
でもそれは決して悪く言ってるのでなく、ちゃんと世の中と向き合っているように感じました。
格式を重んじる仕立て屋が窮地を脱する為に、そして何より自身の世界を広げる物語。
それは実に緻密な作りで序盤は単調な毎日を描き、色調も抑え台詞も少なく寧ろ仕事の音(布をこする等の生活音)ばかりを印象付けます。
日本でもですが、昔からの職人は時代に取り残されてしまい、その技術や心が途絶えてしまっているのが寂しく思います。
まさにそんな現代社会を描いた作品。
しかし視点を変えることで彼はその窮地から抜け出して行くんですね。
徐々に絵面はギリシャらしい鮮やかな色合いになり、笑顔も多く映るようになっていきます。
気がつくと彼は携わる人々の人生を仕立て上げ、また自身も段々と花開く様に。
この手にしては珍しく、可愛らしい部分だけでなく男と女を生々しく挟んできたのも印象的。
でも彼が自身の世界を広げるには、結構大事なエピソードだと思ってます。
あと、お父さんとその友人がパリッとしててすっごいおしゃれなのが好き。老後はこう在りたいと観ていて思いました。
私自身スーツと無縁な仕事とあり、ちょっと憧れます。
とある人生を描いた、とても良い作品でした。
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