すずき

テーラー 人生の仕立て屋のすずきのレビュー・感想・評価

テーラー 人生の仕立て屋(2020年製作の映画)
2.9
アテネで父と共に紳士服の仕立て屋を営むニコス。
だが、時代の移り変わりと共に高級紳士服は売れなくなり、更にギリシャは経済危機。
とうとう店を差し押さえられてしまい、父も病に倒れてしまう。
ニコスは移動式屋台で紳士服を売る事をひらめく。
だがやはりオーダースーツは売れず、どういうわけかウェデングドレスの依頼を引き受けてしまう。
ニコスは家のお隣さんの、婦人服洋裁経験のある人妻とその幼い娘を巻き込み、どうにか婦人服の制作販売をこなしていくのだが…

うーん、悪い意味でいかにもミニシアターな映画だった。
いや決して監督の腕が悪いわけじゃなく、一般受けを狙う作りじゃない、というだけの事なんだけど、自分には合わなかったのかも。
ミニシアター系映画って、予算の関係で派手な映像で盛り上げる事が出来ないのはしょうがないけどさ、どうして脚本まで地味で盛り上がりに欠ける展開にするんだろう、って考えさせられた。
そりゃあ観客にウケる事が映画の優劣の全てじゃないけどさ、こちとら一般人だから、やっぱりスコアは低くならざるをえない…

地中海に面したギリシャの明るい雰囲気の映画化と思ってたら、経済危機に瀕しているギリシャの閉塞的なストレスを感じる映画だった。
ちょっと嫌な雰囲気を感じるシーンとか、重低音とか雑音の「嫌な音」でストレスや悪い予感を表現するのは上手かった。
あと主人公が寡黙で、表情から感情を読み取りづらく、オマケにたまに入る小笑いがややキモい。
「ジョーカー」みたいに、溜まりに溜まったストレスが爆発しそうな雰囲気がちょっとあるのが怖い。笑

移動式の屋台でテーラーをする、という設定は凄くワクワクする。
しかし本編で、そのワクワク感をあまり描写出来なかったのは良くなかった点。
市場でお隣さんの娘が呼び込みを手伝ってくれて大繁盛、のシーンは良かった。そういうわかりやすい右肩上がりの大成功描写がもっとあっても良かった。
せっかく移動式なんだから、ギリシャ各地を回るロードムービーでも良かったかも。
個人的にロードムービーって、盛り上がりに欠けても許されるジャンルだし。
あ、でもそれだと「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」と被るか。
一般受けはしそうだけど、監督としては作り手のプライドが二番煎じを許さないだろうなぁ。