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ふるさとのmiporingoのレビュー・感想・評価

ふるさと(1983年製作の映画)
3.9
友人が昔徳山村を訪れてその時に会ってお話を聞いたという増山たづ子さんのことを知ったのが去年か一昨年だったかな。この映画をすでに観ていたにもかかわらず、しばらくわたしの頭の中で繋がってなくて、ハッとして観直したらやはりその徳山ダムの映画だった。去年(2021年)の夏、東京都美術館で開催され、増山たづ子さんの写真が展示されてポスターにもなった「Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる」という展覧会も訪れて、ダムの底に沈む前の徳山村の自然やそこに住む人々の姿に触れ、あらためて何度かこの映画を観ている。わたしの父が岐阜県高山市の出身で、子どもの頃に遊んでもらった長身の亡き祖父が、なんとなく加藤嘉さんに似ている気がするし、方言も懐かしかったりする。今は父が施設に入っていて一時期は朦朧としていたり今は好きなことをしてシャキッとしていることもあったりするのも、映画の中の加藤嘉さんに重なる。何かに夢中になったりワクワクするようなことがあると目が輝いて、失った何かをまた取り戻したように復活する感じ。それを演技で出来る加藤嘉さん、凄いわ。
加藤嘉さん演じる老人のお葬式の場面に増山たづ子さんがエキストラで出ていて小芝居してるのが面白かった。
こういう人々の生活があることを、ここにダムを作ろうと決めた人たちは理解してたのかな。ただただ地図しか見てなかった気がする。二人が釣りをした長者が淵の美しさも知るはずがない。小学校の授業風景で少し触れてるけど、ここ徳山村には縄文の時代の遺跡もあって、もう何万年も前から人々の営みがあったこともわかっている。何代ものあいだそこで暮らし続けてきた村の人々が諦めの表情で櫛の歯が欠けるように去っていく様子が切ない。不器用な息子の長門裕之も優しい樫山文枝もよかった。よかったが、やはり古臭い家父長制度下の夫の威張り方がね…それが現実だったのだから仕方ないとはいえ。
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