ミシンそば

コーダ あいのうたのミシンそばのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
3.7
これ多分、リメイク元のフランス映画も観た方がよかったな……でも製作の裏には監督や演者の並々ならぬ努力が見えるゆえ、別物ととらえてもOKかも(原作が酪農家なのに対し、こちらは漁師で、ヘダー監督にとっても馴染みが深いものらしい)。

まず、マーリー・マトリンの存在がこの作品に途轍もない説得力を与えているのは間違いない。
出資者の反対を押し切って主人公ルビー以外の家族全員本物の聾啞者で、尚且つ漁師町の労働者の悲哀に対しても真摯だからこそ、その説得力が生まれたのだろう。

ただ、PG-12指定の理由が割りとすぐにわかるくらいには、下ネタ・エロネタ多し。
手話でドン引きしたのは多分この映画が初めてだろう(話、というからにはそう言う語彙もあるんだろうが…)。
それから聾唖者関係なしに、ルビーの家族のリテラシーの低さ、古い体質的な性格描写も結構あり、そこでもちょっと引いた。

ただ、話が進むにつれてそう言った認識も解けてゆき、ちゃんと彼らのことを愛することができる流れに持って行くのは上手い。
“例の場面”を周りにチクったマイルズ(作中でルビーと和解するけども)が、ちょっとした制裁を受けるという本当にちょっとした因果応報は笑った。

何にせよ、かなりきれいに終わった印象。
「サウンド・オブ・メタル」でも観られた“無音”描写がこの作品にもあったが、それだけでもこの映画は観てよかったと思える名作と言っていいだろう。
(ただ、耳が聞こえない家族に歌をどのように聴かせるか、と言うのを楽しみにしていたのだが、個人的にはそこにはそれほど…って感じ)。