海渡

コーダ あいのうたの海渡のレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.5
「聴くこと」や「音楽」とは何なのか、当たり前のことが揺るがされるような体験と、激しくぶつかり合いながら生まれる家族愛への感動があった。音楽って本当に素晴らしいね。

印象的だったのは、学校のコンサートでルピーとマイルズがデュエットするなか無音になり聾唖の視点になって映していたシーンと、父さんが隣で歌うルビーの首元に手を当てて目を閉じてその振動を感じるシーン。

「聴こえない」とはどういうことなのか、本当だったら愛する娘の歌なんて聴きたいに決まっているのに、一切聞こえることはない。もどかしいんだろうなあほんとに。

それでも父さんは歌を聴くことを諦めずに、彼なりに感じようとする。
なんかそんな姿を見てると、これまで自分の中で疑うことなく「音楽」=「音」と思っていたことが崩れていったというか、少なくとも耳だけで感じることができるものではないんだな、って思えてきた。

自分自身と家族と、そこに生まれる葛藤や愛もすごーく良かった。

人間誰しも「これをしたい」と「これをしなければならない」がぶつかってどうにもできなることってあるし、その状況での彼女の心の葛藤ってすごく共感できるものだと思う。

その上彼女はその「したいこと」について家族に直接知って(聴いて)もらうことができないわけだし。だからこそ家族それぞれが寄り添い合うことがかなり重要で、彼らがぶつかり合う中で少しずつ理解しあっていく過程に大きな意味を感じた、気がする。
母さんが言った「あなたが<聴こえる>と知ったとき、心が沈んだ」っていう言葉が印象に残ってる。あの言葉の奥にある信頼とか愛情とかがなんとも言えず良い。

オーディションでの"Both Sides Now"は泣けたな〜。この曲の歌詞が不器用だけどまっすぐな彼ら家族にぴったりとフィットしてた。
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