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コーダ あいのうたのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.1
半年近くぶりの映画館でした。
コロナ下で仕事以外は外出せずに、休みの日もほとんど家にこもりっきりで、Netflixやアマプラに大変お世話になっております。

この作品、映画館で観て本当に良かったです。
聴覚障害者の家族の中で唯一健聴者の高校生が主人公で、彼女が歌の才能を発揮し、コーラス部の活動や音大受験に向けて葛藤しながらも頑張っていく話で、主人公のルビーが歌うシーンがたくさんあるんですね。
ほんとに伸びやかな素晴らしい歌声で、家のテレビだったら作品の魅力が半減してしまいます。

ルビーの歌はこの作品の大きな見どころですが、ヤングケアラーの問題について考えさせられるし、聴覚障害者の世界、日常が描かれていて、それを実際に聴覚障害のある俳優が演じているからリアリティがあり、それもこの作品の特徴と良さになっています。

家族で唯一耳が聞こえるルビーは、家族の手話通訳はもちろん、父親や兄と船に乗って漁を手伝い、操業時の無線応対などの安全管理も担い、魚の取引交渉もし、両親の通院にも付き添い…と家族は完全にルビーに依存していて、そのせいで遅刻や居眠りで勉強に身が入らないし、部活も両立が難しいことも多く、家族のことを背負う事で、自分がやりたい事が制限されたりできなくなったり、将来の夢だって今の状況を考えると諦めざるを得なかったりと、これはまさに多くのヤングケアラーが抱える典型的な問題で、そんなルビーを見ていると、胸が痛み何とも気の毒になってしまいます。

両親もまた、ずっとそうしてルビーに頼ってきたので、それが当たり前になってて、ルビーの抱える問題の深刻さに気付いてないし、ルビーが訴えてもなかなか理解されないのももどかしいです。

健聴者と聴覚障害者を隔てる壁は、たとえ仲の良い結束した家族の中にでもあり、難しさを感じます。
家族だから支え合って当たり前、親の手伝いをするのは当たり前とか、そういう事です済まされないレベルなんですが、例えば、学校がルビーの家庭環境を把握し、ルビーや家族へのケアや支援など何らかの手立てがあればまた違ったんでしょうけど、そういう事が何もなくて、ただひたすら当事者が抱えて苦悩するのが、今の社会の現状なんだと思います。
家族だけで解決するには難しい問題なので、この作品を通してヤングケアラーの問題にスポットが当たり、もっと広く認知され、社会の問題として考えられるようになったら良いなと思います。

ルビーも両親も兄も、みんなが互いを必要としとても大事に思い合ってて、ルビーも家族も自立しようとする様に胸が熱くなりました。

また、俳優が演じる手話が素晴らしく、手話の世界の豊かさや楽しさも感じられ、とても魅力的なコミュニケーションである事が伝わってきたのもとても良かったです。

ルビーを演じたエミリア・ジョーンズは手話や漁や歌を見事にものにしていて、練習したのかもともとできる人を選んだのかは知りませんが、練習して身に付けたとしたらすごいです。
ほんとに素晴らしかったです。

6
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