hajime363

コーダ あいのうたのhajime363のレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
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『MARVELじゃない映画のクレジットも最後まで観よう!?』

最後に流れるテーマ曲にやられましたね。
ぜひ日本語字幕を追わないで、歌詞を聴きながら映画を反芻してほしい……

原作映画にもあった“歌う”という行為が持つ音を介した言語メッセージ以外のコミュニケーションとしての側面は、しっかりとエモエモ親子物語で描きつつ。

本作のアレンジで強調されていると感じたのは①教師にとっての音楽と②表現としての音楽でした。

先生は単純にルビーの歌の上手さだけに注目して背中を押していないことが強調されていました。
マイルズをチラ見しながら人前でなかなか歌えないルビーに「そっちを見ても解決しないぞ」って言ったり。
生徒の人間関係に目線を配りつつ“大人になる”ためのコミュニケーションツールとして音楽を用いている教師としての側面が強調されていたと思います。

そして、それを劇中の台詞で先生は「(人に音楽を教えるのが)I'm good at …」と言っていて字幕では“天職”と訳しています。でも、ニュアンス的には“上手だから…”くらいの温度だと思うんですよね。
それはエンディングで流れる“Beyond The Shore”で「It's a call can't ignore」というフレーズがあって、これは家族が求める助けの声(あるいは、湾岸警備隊だったり目覚ましだったり)と天職を意味する“calling”が重なっている表現だと解釈できるからです。先生にとっての音楽はあくまでも表現としての“calling”ではなくて、音楽を通じて人を成長させることが“上手”だと気が付いて教師の道を選択した、対比関係になってると思います。

そう、で、最後のテーマ曲“Beyond The Shore”ですよ!
劇中には流れない、今回の物語を通じてルビーが感じたことを歌に昇華して表現しています。
これによって、それまで物語の中で完結していた歌を介したコミュニケーションが映画の外に飛び出してきます。
それは観客が“この歌をどう受けとるか?”というコミュニケーションが発生するからです。
歌詞の一つ一つに映画のあらゆるシーンが思い起こされて、人により解釈が異なると思います。
そしてそれは同時に“この映画をどう受けとるか?”と置き換えることも出来るという立体的な仕上がりだから、これはもうアカデミー賞だ。

歌詞を貼っておきたかったけど、コピペ出来ないのでググってくださいまし。
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