永遠の寂しんぼ

コーダ あいのうたの永遠の寂しんぼのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.0
『感動的な映画で下品な話しないで』

良い話だとは思うし聴覚障害者の家族を描いてる時点でポリコレが流行っている今のアカデミー賞で作品賞を獲るのも理解できる。ただ、個人的には納得いかない点が多かったのでそこまで良い映画とは思わないかな。

まず何より色々と下品すぎる。去年の『Our Friend / アワー・フレンド』もそうだったけど、この手の感動できるかもしれない、泣けるかもしれないと期待して観に行くような良いテーマの映画で登場人物が下品な会話をしていると物凄く興醒めする。今作でも前半は主人公ルビーの家族の下品すぎる会話にドン引きした。リメイク元がフランス映画だからかもしれないけど、いくら何でも汚いor卑猥な言葉を言い過ぎ。自由奔放な夫婦ってことなんだろうけど、年頃の娘の前で下品な言葉言ったり行為をしたりするのは個人的にはあり得ない事なのでこの時点でかなりがっかりした。ルビーには日常茶飯事なのか平気な顔してるけど、正直あれは間接的な性的虐待ではないかとすら思った。

それに中盤までのルビーの母親と同級生マイルズの彼女に対する心無い言動が割とスルー気味だったのが許せない。あの母親は自己中過ぎるし、マイルズにいたってはもしも僕がルビーだったらあの学校の場面で全力でビンタして一生口聞かないね。ルビーが良い子過ぎ、周り勝手過ぎなのに音楽の先生に遅刻を怒られててホント可哀想だった。

もちろん本作の素晴らしい点も理解しているつもりではある。学校のコンサートでのルビーの父親が普段感じている何も聴こえない世界、周りが音楽を楽しんでいるのに自分だけ何も感じれない悲しさと虚しさを観客が疑似体験できる作りだったのは素晴らしい試みだった。あのシーンは劇場で体験してこそだと思う。終盤のルビーの歌声も家族に対する思いやりも素晴らしいの一言だし、マイノリティの家族の中で自分の夢に向かって進もうとするルビーの物語としては何の不満もない。