煙草と甘いコーヒー

コーダ あいのうたの煙草と甘いコーヒーのネタバレレビュー・内容・結末

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

父親の手話に何度も笑わされてしまった。

手と腕、表情、そして体全身で表現する手話がこんなにも表情豊かだとは!

手話は、日本語、英語、その他多くの言語の中のひとつなだけだと思えた。
(それぞれの言語に対しての手話があるみたいなので、広い意味での)

聾者家族の中に最後に加わった聴者の主人公:ルビー。

家族の中では聞こえることでマイノリティになり、外に出れば、自分以外の家族全員が聾者だということでからかわれてきたルビー。

そんな彼女の歌が素晴らしいという神様のいたずら。

家族の存在が自分への劣等感へとつながり、殻に閉じこもりがちなのがデフォルトに。

しかし、聞こえない家族と外の世界とを繋げる役割も当然担うことになっていたルビーにとって、家族は、自分が殻の外に踏み出せずにいることへの格好の言い訳になっていた。自分でも気づかないうちに。

そんな、互いに甘え、依存し、支え合ってきた四人家族。

聞こえる娘に頼るのが当たり前であり、聞こえない家族がいるからが口癖のルビー。

そんな彼女たちを、名物音楽教師(この先生もサイコーだった)や恋人との出会い、馬鹿正直な調査官たちが掻き乱していく。

障害者からは外の世界がどう見えているのか、どう見られているかを、障害者の視点で捉えているのに、説教臭くなく、マジョリティを安易に描いていないから、両者の間に横たわっている大きな隔たりの存在感が醸し出す「やるせなさ」がやるせなくて涙が何度も溢れてきてしまった。

それなのに、この家族がたまらなく面白いので、泣きながら笑って、笑いながら泣いてで、ここまでヤラられてしまっては最高点をつけるしかなく。

鑑賞後に、2014年のフランス映画「エール」の英語版リメイクと知り、正直少しがっかりしたのは否めないが、知らなかった時点でのスコアで締め切ることに。