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隔たる世界の2人のriikoのレビュー・感想・評価

隔たる世界の2人(2020年製作の映画)
4.2
BLMムービー。
テーマとは裏腹に演出はカジュアルな論調で、30分というショートムービー。
原題の「Two Distant Strangers」は2pacのChangesからの一節をそのまま当てたタイトル。
作中からエンドロールまで度々流れていた「The Way it Is」もChangesでサンプリングされている。

2pacのChangesは「諦めずに俺たちが変えてやる」というような前向きなリリックに対して、
原曲はストリートの現状を憂い悟すように歌い上げていて、特にバース3 (Cause the law don’t change another’s mind / 法律じゃ人の心は変えられないんだ)はこの作品にインスパイアを与えているようにすら思える。法律を守らせるはずの警官が変わっていない。

Son, that's just the way it is
Some things will never change
(なあ、そんなもんだよ、世の中)
(どうしたって変わらないこともあるんだ)

このThe Way it isが幾度も流れる中、主人公は諦めずに前向きであり続ける演出は皮肉さと歯痒さを感じられた。

「体力も金もあるから対話を諦めずにやってやるさ」

と主人公が言い放ち希望を残したラストカットにこそなっていたが、
言い換えれば弱者の黒人に希望はないのかと思ってしまった。

「俺たちはが生きていくには変わらないといけない」
Chancesではそう訴えているが、ジョージ・フロイドさんの事件がBLMの運動に発展してしまったように、そしてこの映画の結末のように、まだまだタイムリープは続いている。

日本人として違和感には気付けても葛藤の感情にはなれていない。
「黒人は何も悪くないのに!」と叫びながらも決して訴えてはいなかったスマホ撮影していた女性のように、この無関心こそがタイムリープに拍車をかけている。SNSを通した世界で知れることなんてほんの一握りなのだと自戒したい。
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