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ゆるキャン△のambiorixのレビュー・感想・評価

ゆるキャン△(2022年製作の映画)
3.2
結論から言うとつまらなかった。そして退屈だった。
その原因は、物語に起伏がなく平板だったから(でもこれに関してはゆるキャン△独自のテイストを劇場版でもぶれずに貫いてみせた…ともいえる)とか、TVシリーズのいい意味で間延びしたゆるいテンポ感を映画のフォーマットにそのまま持ち込んでしまったからとか、あとは単純に2時間も使って語るような話ではなかったから、などなど色々と考えられると思うけど、個人的には「みんなでキャンプ場を作る」という作中におけるメインイベントにいまいち乗り切れなかったのが最大の要因だったように思う。「なんでそうまでしてキャンプ場を作らなきゃいけないの?」っていう疑問に答えを与えてくれないまま話がどんどんどんどん先に進んでいっちゃうんだよな。
いちおう途中で「再生」なるいかにも取ってつけたようなコンセプトが出てきて、これは疎遠になってしまったリン、なでしこ、大垣、犬子、斉藤の5人の絆の再生や寂れてしまった地方の再生、もっというと、多忙な日々によって心が磨耗しなんの面白みもない大人になってしまった女の子たちが楽しかった青春時代を思い出す意味での再生…等々を象徴したキーワードで、彼女たちはその再生を果たすためにキャンプ場を作っているのだ、みたいな解釈もまあできなくはない。なんだけど、これに関しては『劇場版SHIROBAKO』や『ゾンビランドサガリベンジ』でも同じ過ちを犯していたが、主人公の逆襲や再生を描こうと思ったらそこに至るまでの喪失のプロセスを丹念に描き込んでおかないとダメなんだよね。同様に今回の本作においても本編が始まった時点で5人はすでに疎遠になってしまっている(しかし疎遠になってしまった事情自体は別にくどくど説明してもらわんでも痛いほど理解できるつくりにはなっています)。そのうえ、5人はそれぞれ自分の人生に悲観しているわけでも自分の選んだ進路を後悔しているわけでもない。現実はむしろその逆で、今の仕事を精一杯頑張り、自分に与えられた職分を最大限全うしようとしているように見える。後ろ向きなところが一切ないのね。じゃによって、つまんない大人から楽しかった高校時代へ〜説の説得力もいきおい弱くなってしまうし、私たちで故郷の山梨を盛り上げるんだ、みたいな描写も希薄だったように感じるので、ここへきて「再生」のテーマは一挙に瓦解してしまう。
じゃあそう考えると、「大人になった主人公」という日常系アニメにおける最大のタブウを侵してまで作り手が描きたかったものは一体なんだったんだろうか?
いやさ、そもそもこの映画に語られるべきテーマ性なんかはなからなく、「なぜ彼女たちはキャンプ場を作るのか」などといった疑問に納得のいく答えを求めないと気が済まないこの態度こそが、俺がつまらない大人になってしまったことの証左なのかもしれない…。
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