chunkymonkey

ひとりじゃない、わたしたちのchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

4.5
代理母という極めて繊細なテーマをコミカルながら丁寧に描いた作品。特殊かつ刻々と変わる状況とともに変化する心の内を表現する主演二人の演技が素晴らしいです。

長年交際していた女性とうまくいかず、以後孤独に生きてきた45歳マットは現状を打破するために代理母出産の依頼をした。ばっちり勉強を重ね親になる準備万端のマットだが完璧を目指すあまり、進学費用のため子宮を提供する代理母の26歳アナに少々過干渉。ややうんざり気味のアナだが、マットのまっすぐな姿勢と垣間見える孤独に共感を覚え徐々に心を開いていく。

セリフが映画用に飾ったところが全くなく本当に自然体。にもかかわらず徹底してコミカル。マットを演じるエド・ヘルムズには驚かされました。ハングオーバー、The Officeでみせてくれたコメディアンらしい面はそのままに、孤独を抱えながら懸命に親になろうとする心の機微を繊細に演じきっている。素直で自然体だからこそめちゃくちゃ笑いました。アナを演じるパティ・ハリソンも控えめな演技がかえって彼女の複雑な思いを際立たせます。

二人がラップトップでみる時代を超えた人気シットコム「フレンズ」には2つの意味がある。一つは、時代を先取りしたフィービーが代理母になるエピソードを意識し、いかにこのテーマが現在でも繊細過ぎて触れてはいけない問題として避けられ放置されているかを問題提起している。もう一つは、「人とのつながり」。マットが開発し多額の出産費用を工面するのを助けた人気アプリ「Loner」(登録した人の写真を閲覧しlikeを押すことでその人のプロフィールを保存するだけのアプリ)とともに、いかに現代人が人とのつながりに飢えているかを象徴しています。にしても最近の映画やドラマを観ていると、テレビ番組をTVでなくラップトップで観るシーンが目立ち、時代ですねー。自分が刻々とジェネレーションギャップの「あちら側」になっていっているのを感じてしまう...

大げさな展開はないですが、正直でシンプルでさわやかな物語です。
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