【十人十色】
柔らかく暖かいタッチとは裏腹に、とても鋭いテーマ。
鑑賞前は「人種」や「LGBTQ」のような内容のお話かと勝手に想像していたけど、実際はもっともっと根源的な「個性」のお話し。
人間は「無くて七癖」なんて言われるくらい、自分でも気が付かないくらい「個性」の塊だと思う。
でも、いざ立ち止まって「自分らしさって?」と考えてみると意外と言葉にできない。
もしかしたら、他人の評価とは別に自分の心の「色」というものは感じにくいものなのかもしれない。
アクティブ?インドア?健康オタク?
他人が善しとするものに染まることが個性ではない。
無理に「他人の色」を真似ることは、自分の個性を殺してしまうことにもなる。
「君は至って正常だよ。ただ少しグレーなだけだ」
周りから見れば普通に服を着て、普通に出勤して、普通に仕事をする「普通の人」。
でも、自分自身から失われていく心の鼓動が自分から色を奪い取ってしまった。
だからこそ、自分の色は自分が何者かを知り、自分自身を認めてあげなければ付かないのかもしれない。
そして、彼には「優しさ」があった。
わが子を抱きしめて、心の底から愛おしいと思える底なしの優しさがあった。
それは誰がなんと言おうと、彼の立派な「個性」。
そして最後に内面から染まっていくあの色こそ、彼の本当の「心の色」だったんだと思う。