原作の『草の響き』をベースにして佐藤泰志本人を描こうとしたような映画です。
原作は「彼」という表記を使いながらも、走ることで「生」の実感を感じていくことや走りながら見るもの聞くものが語られていく一人称小説(のようなもの)ですので、その熱さを映画という表現形態では表現するのは難しいのかもしれません。
そうしたこともあったのでしょう、原作にはない妻を登場させ、三人称視点の物語に変えています。
その妻を演じた奈緒さんの渋い演技もあり、映画としてはうまくまとまっています。
ただ、なにか違うなあという感じは残ります。原作には自殺未遂も精神科病院での拘束もありません。走り続けることで自分を保とうとする「彼」がいるだけです。
「ネタバレレビュー・あらすじ:原作ではなく佐藤泰志本人を描こうとしているようだ」
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