回想シーンでご飯3杯いける

決戦は日曜日の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

決戦は日曜日(2022年製作の映画)
4.0
日本の政治コメディが最終的にハゲや女性問題(お色気)で笑わせる方向でお茶を濁しがちな所を、本作はしっかり政治、特に選挙にまつわるエピソードを濃密に盛り込んで、「刺さる」つまり風刺として機能しているのが良い。

これだけ的を得たストーリーになるのは、やはりオリジナル脚本であるからというのが大きい。題材になっているのは、実際にも問題が浮上しがちな世襲議員なのだが、敢えて女性に設定する事で、先に挙げたようなハゲや女性問題にストーリーが進む事も無く、予定調和に陥らないニュートラルな議論を生む事に成功している。

更に、候補者の秘書を主人公にする事で、選挙活動の構造的な問題にもメスを入れる事に成功。候補者役の宮沢りえは、あまりイメージに合わない役どころに思えるんだけど、これも先に挙げた「予定調和に陥らない」に一躍買っていると思う。

世襲議員や過激右派だけを笑いの対象にするのではなく、その反対勢力もコミカルに描いている点にも注目したい。作品が目指したのは、特定の政治思想に対するステレオタイプな批判ではなく、日本の選挙制度が抱える構造や風習的な問題。そして、この状態に慣れてしまった、僕達有権者への警告なのだと思う。