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シリアスマンのmerrydeerのレビュー・感想・評価

シリアスマン(2009年製作の映画)
3.1
大学で物理学を教える生真面目なユダヤ人の男性が次から次に災難に見舞われる様がコミカルだけどシュールかつどこか淡白なテイストで淡々と展開されていきます。

主人公の周りには、無職病気持ちで居候の兄、何故か関係が(一方的に)冷え切って友人と再婚を目論む妻に生意気な男女の子ども、ご近所には主人公宅の芝まで刈る非ユダヤ人、職場の大学では落第点を賄賂で覆そうとする韓国人生徒…とトラブルの火種が序盤からてんこ盛り。
そうした火種が案の定次々と地味に着火し、主人公を悩ませる。

主人公に降りかかる災難は十分に悲劇的なのだけど、描き方はあくまで(面白いんだか面白くないんだか何とも微妙な)コメディテイストのため、観ている側も何かよく分からない笑みがこぼれるという。笑

旧約聖書内のヨブ記との関連性が指摘されてるとの事で、生真面目だろうが自堕落だろうが、因果応報なんて関係なく良い事も悪い事も生きていく上ではやってくるんだよ、と言うやるせない真実を軽薄なドラマに対するアンチテーゼにも思える何ともコーエン兄弟味に溢れた作風でご丁寧にご教示いただいている様な感覚です。
そんなん別に映画観賞してまで教えられたくない、と言ったらそれまでだし、ファーゴやノーカントリー程のスリリングな要素も希薄だし、他の作品観賞に時間を回した方が有意義なのは確定的に明らか…なはずなんだけど奇妙に記憶には残る遅効性の毒みたいな作品でした。
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