benno

シリアスマンのbennoのレビュー・感想・評価

シリアスマン(2009年製作の映画)
4.5
コーエン兄弟監督作品4作目…。

「身に降りかかる出来事をあるがままに受け入れよ」…ここから始まる不思議で怪しい寓話のプロローグ…とても不確かな終わり方で後を引きます。

そして本編…1967年ミネソタ州郊外…平凡な人生を歩んできたユダヤ人の物理学の教授ラリー(マイケル・スタールバーク)…絵に描いたような真面目人間…。

心配事と言えば大学が終身在職を受け入れてくれるかどうか…それと13歳の息子ダニーが行うユダヤ教成人儀式のことぐらい…。

しかし実際、ラリーの知らないところで家族はそれぞれに秘密や問題を抱えていたのです。

そして遂にはラリー自身にも思いもよらぬ災難が…。

落第点をつけた学生からは強引にワイロを押しつけられ点数を上げるようにと…それを断ると何故か訴訟を起こされそうに…

隣人は敷地の境界線を侵食し始めたり…挙げ句の果てに、妻からは唐突に好きな人がいると離婚を切り出されます…その相手がラリーの友人で、いけすかないサイ…寄りによってサイはラリーに「君のことは尊敬しているが出て行ってくれ」と格安モーテルを薦めるのです。

すっかり混乱、疲弊してしまうラリーはラビに相談に行くのですが……。

アメリカにおけるユダヤ人コミュニティを描いた作品ではありますが、決してユダヤ教に特化したことではありません…。

ラリーが大学で学生に教えていた物理学の講義…「シュレディンガーの猫」…箱の中の猫の生死がわかるか?という問いに、ラリー自身もわからないと答え、「不確定性原理」を取り上げた時も予測不可能と語ります…何だかよくわかりませんが…それが答え!!

プロローグの寓話とここで繋がり…物事は不確かで誰にも分からない…ということです。

ラビや弁護士に相談するも頼りにならず、何の役にも立ちません…この世のことなど人間には知る由もないのです…。

真面目にしていればいつかは報われる…ではなく悉く真面目過ぎる人間は人生損をする…。

しかし最高峰のヨボヨボのラビ…マーシャク師が気付かせてくれます。

冒頭でも流れた曲ジェファーソン・エアプレインの曲♬ Somebody to Love …(長いので要約します)
真実が偽りとわかり、全ての喜びが消えた時…
心を尽くした人を愛しなさい…

ラリーの夫婦関係は既に崩壊、家族もバラバラ…ただ原点に戻り夫婦・家族関係を見直すのでした…。

…めでたし!! めでたし!! …といきたいところですが、流石のコーエン兄弟…とてもいやらしくシニカルです。

真面目人間のラリーが無理難題に耐えきれず、お金も底をつき…遂に不正の誘惑に傾きそうに…そんな中以前健康診断を受けた結果の電話が…ドクターは今すぐ話をしたいと…不吉な予感しかしません。

彼が泣きながら”I am not an evil man!”(私は悪人じゃない! )と言うところはめちゃ不憫で可哀想で…でも笑っちゃいます。ちょっとは報われて欲しいですっს

ただ、ラストもこれでもか〰︎と畳み掛けます…。

やっぱりコーエン兄弟の脚本はかなり面白く、見応えがあります。何気に映像も良く、ラリーが屋根の上に立つ姿はキマってます(ジャケ写)…ただ見ているのは隣に住む女性の日光浴姿です…そこがコーエンらしい。

そして『ファーゴ』で裏切られたエンドロール!!
今回もしっかり隅から隅まで……ありました!!

No Jews were harmed in the making of this motion picture.
この映画制作に際し、危害を受けたユダヤ人はおり  ません。


thanks to; JTK 師匠𓂃܀ꕤ୭*
benno

benno