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死刑執行人のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

死刑執行人(1963年製作の映画)
3.0
[葬儀屋も処刑人はお嫌い] 60点

物語は処刑場の朝から始まる。不味そうな朝ご飯をだだっ広い車庫のような待合室で食べる看守、棺を持ち込む葬儀屋。すると、奥の扉から背広の男たちが出てきて、最後に小柄な老人が登場する。彼こそが題名となっている"処刑人"なのだ。若い葬儀屋はこの処刑人について"とてもそうは見えない"としつつ、不気味な職業の老人に関わるのには否定的だった。彼の魅力的な娘と出会うまでは。"3B1S"と呼ばれ戦後スペインを代表する監督の一人であるルイス・ガルシア・ベルランガの作品群の中で本作品は、クライテリオンがソフト化したこともあって最も有名な作品と言えるかもしれない。

処刑人の娘、葬儀屋という双方知られると恋人が去っていく肩書の持ち主が惹かれ合い、結局デキ婚することになる。しかし、今度は処刑人の義父が引退するせいで公営住宅に転居できず、一人娘が片親であると宣言するために離婚するか、処刑人の仕事を継ぐしかなくなってしまう。葬儀屋として働いていた頃のポップさは飛行機から取り出した棺を運ぶ際、手荷物搭載車が速すぎて後ろに付いてくる遺族がダッシュし始め、結局遺体も取り違えていたというルネ・クレール『幕間』のような強烈なブラックジョークで大きな盛り上がりを見せる。しかし、そういった葬儀屋/処刑人を用いたブラックジョークは、青年が処刑人を継いで初仕事を迎えることで、それにビビり散らす様を観察する方向へと舵を切ってしまう。

中盤の中弛みが激しいのだが、最終盤で引き摺られるように処刑室へと押し込まれるのは、死刑囚よりも無様でブラックさを漸く回復する。しかし、設定に甘んじたという印象は拭えず、どっち付かずの作品になっていたのは否めない。結婚式の最中に聖職者たちが片付け始めるのは面白かったけども。
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